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東邦大学 薬学部
生化学教室 高橋 良哉
老化:いつから?止められる?戻れる? 

加齢速度と環境因子(温度・食餌・冬眠)−誕生から死までの生物時間の流れ−

3.カレンダー時間と生物時間の流れ

 環境温度と食餌制限は、動物の寿命に対して生涯のどの時期でもほぼ同じ効果で寿命に影響を与えているようです。ハムスターの冬眠でも同様な現象がみられます。すなわち、同一環境下では誕生−発育−成熟−老化−死の過程はある決まった速度で進行していることを意味するのかも知れません。前述のキイロショウジョウバエの飼育温度とラットの食餌制限の実験結果を例に取り「カレンダー時間」と「生物時間(50%生存日数または平均寿命=100とした相対値)」との関係を線形モデルで表すと図5のようになます。

 例えば、キイロショウジョウバエを生涯21℃と27℃で飼育した時の平均寿命はそれぞれ約100日、約40日であることから、生物時間の経過速度は21℃に比べ27℃で約2.5倍となっていると考えられます(図5左、細い実線直線矢印)。21℃で飼育しているキイロショウジョウバエを若齢期あるいは中年期に27℃に一定期間(3週間)おいた場合は、その期間は27℃飼育の速度で生物時間が経過し、その後21℃に戻すことによりまた元の緩やかな速度にもどると予想されます。すなわち、27℃飼育の短命効果は、飼育された時期が異なっていてもその期間が同じであるので、両者の死亡日は同じ70日となります。同様に、ラットの食餌制限の延命効果についても同じような線形モデルで表すことができます(図5右)。