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東邦大学 薬学部
生化学教室 高橋 良哉
老化:いつから?止められる?戻れる? 

加齢速度と環境因子(温度・食餌・冬眠)−誕生から死までの生物時間の流れ−

おわりに

 「あの人は若い頃の無理がたたり早死にしたんだよ。」などと耳にすることがある。それは、若い頃の無理が生物時間の経過を速める方向に働いた結果なのかもしれない。すなわち、中高年になってから健全な生活を送ったとしても、その人が生涯健全な生活を送ることで期待される寿命に到達できないことを意味しているのかもしれません(図6参照)。

 

  最後に、飼育温度、食餌制限、冬眠による寿命に対する影響は、酸化傷害や生体防御機構などだけでは簡単に説明できないように思われます。最近、離乳期あるいは成熟期から長期間食餌制限を行った動物と同齢の自由摂食群との比較から得られた結果から食餌制限による寿命延長効果を酸化傷害や生体防御機構と関連付けて議論した報告が多く見られます。 しかし、このような長期にわたる動物実験においては、得られた結果が寿命延長に伴う“遅延”による影響なのか、あるいは寿命とは切り離される環境因子に対する生体の“応答”による影響なのか、あるいはその両方の影響によるのかを慎重に判断する必要があると考えられます。