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東邦大学 薬学部
生化学教室 高橋 良哉
老化:いつから?止められる?戻れる? 

加齢速度と環境因子(温度・食餌・冬眠)−誕生から死までの生物時間の流れ−

1.キイロショウジョウバエの寿命と環境温度

昆虫、魚類などのような変温動物の寿命は環境温度によって大きく変化します。例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の飼育温度を10℃下げると、約10〜30℃の範囲で平均寿命、最長寿命ともに約2〜3倍延長します(図1)。

 

キイロショウジョウバエの卵(胚)発生速度は、環境温度が10℃下がると約2〜3倍遅くなります。キイロショウジョウバエの羽化から死に至るまで時間、すなわち寿命も卵(胚)発生に要する時間も環境温度に依存する点では両者はよく似ています(図2)。

 

とても興味深いことは、飼育温度の寿命に対する影響は生涯のどの時期でもみられ、寿命の延長日数は高温(27℃)飼育された期間と逆相関を示します(図3)。
はじめに述べたように、若齢期で高温飼育により傷害が起きたとしても、その影響が生涯続くとは考えにくいです。むしろ、若齢期の高温飼育により生物時間の流れが早まったのかもしれません。