研究概要
私達は、「老化および老化関連疾患の発症とその制御」を主要研究課題として掲げた基礎研究を行っています。
老化は複数の「遺伝要因」と「環境要因」の影響を受けながら加齢と共に進行する生命現象です。一般に多くの老化現象は性成熟期以降から徐々に現れはじめます。しかし、離乳して間もない若齢期の食事(マウス、ラットの場合)や若年期の環境温度(昆虫の場合)が老化の進行や寿命に影響を与えることがわかってきました。このことは、老化は決して年をとってからだけの問題ではないことを意味しています。からだの中に環境に左右されながら速度を変えて時を刻む時計のようなしくみがあるのかもしれません。現在、若齢期(成長期)の食事などの環境の影響と老化との関係について研究を進めています。
一方、健康維持における適切な食事や定期的運動の重要性は社会的に十分認知されていますが、それらを実践している人は必ずしも多くありません。多くの人々が食事や運動に強い関心を抱き、実行しようと思いはじめるのは健康に不安を感じはじめる40歳ごろからです。このような社会的な状況を鑑み、私達は中高齢期からの食餌制限や定期的運動の有益作用についてマウスやラットを用いて実験を行なっています。
現在の私達の主な研究内容は以下の通りです。
研究内容
主要研究課題:老化および老化関連疾患の発症とその制御
- 老化促進モデルマウス(SAM)の老化促進分子機構
- 若齢期の環境が老化に与える影響
- 加齢速度と環境因子(生物時間)
- 老化・老化関連疾患の制御:中高齢期からのアプローチ(食事制限など)
- 鉄と老化および老化関連疾患
- 脂質代謝と遺伝子多型
- 遺伝子発現の加齢変化の性差・種差・個体差:ヒトへの外挿
(東邦大学 薬学部 生化学教室 高橋 良哉)