海藻押し葉工房

海藻押し葉のつくり方

海藻押し葉つくりの実際

海藻押し葉つくりの手順

 海藻の押し葉は誰がつくってもきれいにできます。新鮮なものほど色もよく、形も整っています。採集したものを数時間放っておくと死んでしまうばかりか、腐敗してしまいます。採集してきた海藻をひろげもせず、ゴミ取りもせずに台紙にのせて乾燥すると、できあがった押し葉は美しくありません。また、大きな台紙に小さなものをたった1個体のせることも不経済な話です。

 海藻の押し葉を作る時には「採集後なるたけ速やかに、きれいに美しく、大きなものをたくさん」作ることを心がけてください。海藻の押し葉は、押し葉を作る人の熱意と美的感覚が反映されます。これらの感覚はたくさんの海藻押し葉を作ることによって磨かれるはずです。だれよりも美しく、大きな押し葉を、たくさん作ることを心がけてください。

  1. 採集記録
    まず、台紙に採集地、採集日と採集者を書き込みます。押し葉が乾燥してから書き込むと思うことは大間違いです。押し葉作成時に必ず台紙の左すみに書き込んでください。乾燥後に採集地も、採集日も忘れてしまった押し葉は結局はゴ
    ミとして捨てることになってしまいます。採集地と採集日の記録は大切なことです。
  2. 塩抜き
    採集してきた海藻をそのまま台紙にのせて乾燥すると、いつまで完全に乾燥できないままにジクジクと湿っぽい状態が続きます。ようやく乾燥しても、雨が降るたびに空気中の湿気を吸って湿っぽく、カビが生えたり、汁がでてきたりします。これは海水の中に含まれる塩分が水分を好むことによるものです。塩分をとりさるために海藻を真水で洗うことを塩抜きといいます。湿気の多いわが国では塩抜きがしっかりされていないと、海藻の押し葉は長期保存ができません。海藻の塩抜きに使った真水は頻繁に交換していつも新しい真水を使ってください。
      塩抜きの時間は、ふつう2〜3分くらいで、体の柔らかいものや繊細なものはもっと短く、固いものは少し長めにします。ホンダワラやミルの仲間は、かなり長い間真水につけておいても完全な塩抜きがむつかしいものです。なかなか乾燥しないのです。そこで、熱湯をかけて細胞を殺してしまうと以外と簡単に乾燥してしまうものです。この方法は後で詳しく述べることにします。
  3. 整枝
    塩抜きの終わったものは新しい真水を満たしたバットの中で枝を整えます。ゴミや小石はよく洗い落とします。ワレカラ、ヨコエビ、ゴカイなどの小動物は丹念に取り除きます。枝の込み合ったものは付着部や分枝の様子がよくわかるようにピンセットやハサミで適当に切り落とします。この作業を整枝とよびます。押し葉ができたときにより自然に、枝打ちや、枝の様子がよくわかるように整えます。この時に、せっかく大きな材料を小さくちぎってしまうことがあります。材料はできるだけ大きく、たくさん、美しく整えてください。
  4. すくい上げ
    整枝の終わった海藻を台紙ですくいあげます。やわらかく繊細なものは枝が集まってしまいがちですし、固いものは形が整えにくいものですが、自然に逆らわず、うつくしくすくい上げてください。
  5. 水切り
    台紙の上にすくいあげた海藻は、まだ相当の水分をふくんでいます。押し葉づくりは、いかに早く乾燥するかどうかにかかっています。早く乾燥してものほど美しい海藻の押し葉ができるといって過言ではありません。すくい上げた海藻の水分をできるだけ取り除いてから本格的な吸水作業に移ります。
  6. ならべと布かけ
    水切りした台紙を古新聞紙の上にのせます。古新聞紙の上にすき間なくならべます。その上に布をかけます。陸上植物は新聞紙の間に挟んで乾燥しますが、海藻は水っぽく、海藻自身がのり分をもっているので新聞紙の間に挟んで乾燥しようとすると、新聞紙にくっついてしまいます。そこで、海藻の上に布をかけて乾燥します。押し葉が完全に乾燥した後に布をはぎとると、海藻は台紙の上にはりついているわけです。
  7. 吸水
    古新聞の上に水切りした台紙をのせ、布をかける。その上に古新聞紙をのせる。その上に水切りした台紙をのせ、布をかける。その上に古新聞紙をのせる。その上に水切りした台紙をのせ、布をかける。その上に古新聞紙をのせる-----と、どんどん積み重ねてゆきます。たくさん積み重ねると、グラグラと不安定になるので、安定を保つために中板を挟み込みます。そして、一番上に押し板をのせます。あまり高く積み上げすぎると倒れてしまいますから注意してください。
  8. 吸水紙の交換
    重石をのせてから1時間後、水分を吸った古新聞紙の交換をします。重石と押し板を取り除くと、そこには水を吸った新聞紙があります。これをとりのぞいて布の上に乾燥した新聞紙をのせます。
    次に、台紙の下の湿った新聞紙の間に手を入れて湿った新聞紙が上になるようにひっくり返しながら右側に移します。右側に移したら湿った新聞紙を乾燥した新聞紙と交換します。
    さらに左側の湿った新聞紙をとりのぞいて布の上に乾燥した新聞紙をのせます。
    次に、台紙の下の湿った新聞紙の間に手を入れて湿った新聞紙が上になるようにひっくり返しながら右側に移します。
    右側に移したら湿った新聞紙を乾燥した新聞紙と交換します。
    この作業を繰り返します。右側に移し終わった時には最初と全く逆に積み重なっているはずです。これに押し板をのせ、重しをのせます。このように新聞紙の交換は、最初の日から3日までは1日2回、その後は乾燥するまで1日1回行います。体のうすいものや、細いものは3日ほどで、ふつう5日から7日ほどで乾燥します。
  9. 布のはぎとり
    上からさわってみて、押し葉の乾燥を確かめたら布をはぎとります。はじの方から、あるいは海藻の根元の方から注意深くていねいにはぎとります。布をはぎとってできあがった押し葉は、ひとまずよく乾いた新聞紙の間に挟み込んでおきます。採集地と採集日の書き込みを忘れたものはこの段階で台紙に書き込んでください。決して山積みしたままで放置しないで下さい。採集地ごとにダンボール紙板に挟んでひもで縛っておいて下さい。
  10. 布の洗濯
    使った新聞紙や、ダンボール紙板を片づける前に、ただちに布の洗濯にとりかかって下さい。はぎ取った布には海藻の破片や、海藻からでたシミがついていたりします。そのまま放置するとカビが生えたり、シミがとれなくなったりします。いつでもきれいな布を用意しておくことが美しい海藻押し葉を作る基本です。

次は 通風乾燥方法のいろいろ

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