

中国華北地方原産の落葉低木。日本へは江戸時代にはすでに渡来している。春にサクラを小さくしたような花を沢山咲かせ、5月頃にはサクランボを小さくしたような真っ赤な実をたくさん付ける。
私が小学3年生の頃はユスラウメの実もニワウメの実と同様に「これはサクランボだ」と信じており、摘んだ実を美味しく頂いていた。その頃に買って食べたサクランボといえば缶詰めの水煮シロップ漬けしか記憶にない。缶詰めのサクランボの実は庭に成る実よりも大きく柄が付いていた。我が家では年に数回、缶詰めのサクランボを牛乳寒天と共に美味しく頂くことがあった。
そんな頃に庭でユスラウメの実が成り、親父からは「これがサクランボだ」と教えられたので私は疑うことなく食べていたのだ。それがサクランボではなくユスラウメだとわかったのは中学1年生になった頃だった。だから私の中のサクランボの味とはユスラウメの実の味だと言ってもよいかもしれない。それほど当時は美味しく食べていたように思う。確かに缶詰のサクランボのような柄はついていなかったが赤く美味しい実であった。今でもユスラウメの実の時期になると食べたくなり、つい枝に手が伸びるが、今ではあまり美味しいと思えなくなってしまった。贅沢になったのだろうか。
近年では食用としても品種改良が進み大実の品種や白実の品種が市場に出回ってきているが、やはりユスラウメの実は従来の小ぶりのものの方が私にはしっくりくる。盆栽展などでたまに実物盆栽の枝にびっしりと見事に実が成っているのを見ると昔を思い出し、食べたくなる。
私は自宅の庭でユスラウメを何本か栽培してみた。いずれも樹齢20年くらいで急に樹に勢いが無くなり、やがて枯れた。これまでにかなりの数のユスラウメを枯らしてしまった。ある程度太くなると急に枯れるのだ。だが殆どの場合は株元からひこばえ(孫生え)が出て再生する場合が多かった。なので、絶えず株本で小苗を一緒に栽培していた。
ユスラウメは挿し木で増やせるのだが、私は「実生で栽培すると何年で花が咲くか」を知りたくて何回も実生を試した。結果は早い株で開花までに4年。平均で6年ほどかかった。実生では“変化”はほとんどみられなかった。実はやはり美味しく頂けた。
(ユスラウメ/バラ科 2023年12月.記)