八重咲ヤマシャクヤクはヤマシャクヤクの八重咲きの品種だ。通常、ヤマシャクヤクの花弁数は5~7枚。八重咲き品種の花弁数を数えたところ、その10倍前後だった。近年急にマニアの間に広まってきた。ここ20年ぐらいのことだろうか。
30年ほど前に知人から「八重咲きのヤマシャクヤクがある」と聞き、見せてもらったことがある。だが、それは雄しべ数枚がかろうじて花弁化したもので、私が想像する八重咲きではなかった。それから15年ほど経って、こんどは「すごい八重咲がある」という噂を耳にするようになった。そしてまた、別の知人、Aさんから「八重咲のヤマシャクヤクがある。作ってみる?」と誘われ、せっかくなので作ってみることにした。
知人Aさんを通して購入した“作ってみることにした”八重咲ヤマシャクヤクの苗の産地は九州だった。栽培を始めて今年で4年目になる。初年度は一株から2本の芽が出て、白く大きな花が咲いた。八重というよりは、雄しべが数枚花弁化した花だった。花も大きいが、とにかく草丈が大きい。本州のヤマシャクヤクの草丈が30cmとすると、その3倍はあっただろうか。大きさで言えばベニバナヤマシャクヤクほどもあるのだが、姿は間違いなくヤマシャクヤクなのだ。2年目には芽数も4本に増え、なんとも見事な八重咲きができた。3年目の昨年は11芽を出したが、8芽しか伸びず、3芽は秋まで動くことは無かった。だが腐りもしなかった。花は大きく、直径13cm~16cmで、完全な八重が3花。少し花弁の少ない八重が2花。チョロ花弁が2花。一重が1花となった。秋まで動かなかった3芽は1年経った今もそのまま動かずにいる。一般にヤマシャクヤクの花の寿命は1~2日とされるのに対し、昨年開花したこの8花はなんと5~8日も持った(きれいに咲いていた)。一番長く咲いていたのは完全な八重だった。花弁数の違いばかりか大きさや花の寿命にここまで違いがあると、もはや八重咲ヤマシャクヤクはヤマシャクヤクとは別種なのではないかと思ってしまう。貴重な品種だ。これからどういう風に変化していくのか、成長が楽しみである。
(ヤマシャクヤク(八重咲ヤマシャクヤク)/ボタン科 2024年1月.記)