熱帯および亜熱帯に多く分布する。栽培種の多くは一年草。草丈1mほどに成長し、朔果からは綿毛が、果実からは食用油が採れる。世界には50種を超える品種があるとされる。現在では遺伝子組み換えや異種交配などによる品種改良によって新しい品種が作られていると聞く。以前に比べて、草丈が低く実の付きが良く、しかも大きいものが多く出回っている。最近は観賞用としてのドライフラワーが人気で、実が大きいものや綿毛が茶色っぽいものを花屋の店頭で見ることができる。
薬草園では茶色の綿毛の品種と白色の綿毛の品種を栽培している。ワタは寒さに弱く、キャンパスのある船橋市あたりではタネ播きは5月下旬頃まで待つ必要がある。それ以前に播くとタネが腐り発芽しないことがあるのだ。気温が25℃以上でないと発芽及び生育に影響する。私が小耳にはさんだ噂によると、低温の18度くらいでも成長する品種があるそうなのだが、まだ出会えていない。
薬草園で仕事を始めた頃、私はとある事情でモモンガを数匹飼うことになったのだが、そのモモンガたちによくワタの実を与えていた。彼らは器用に綿花をほぐし、ふわふわにして寝床を作り、タネを“ついでに”食べていた。あまりに美味しそうに食べるので私もワタのタネを食べてみた。クセが無く、結構脂分が多く、ナタネとクルミの中間のような感じだと思った。モモンガたちに教えてもらった味である。
(ワタ/アオイ科 2023年12月.記)