山野のやや暗い湿った場所に多く生える多年草。栄養状態により雄株から雌株に性転換する面白い性質を持つ。球根の栄養状態が良くなると雌株になる。私の栽培経験上、実が付くと3割ぐらいの確率で親球根が枯れ、小球根が残る。
ウラシマソウの花はサトイモ科特有の、仏炎苞(ぶつえんほう)を持つ、ちょっと変わった形をしている。春の草木が芽吹き、生い茂りはじめた頃に開花し、その中から糸状の付属体の先端を伸ばして垂れさせる。私が中学生の頃には、「気持ちが悪い」とか「毒々しい」という理由で抜いて捨てられているのをよく目にした。個人的には好きな花だった。
私はウラシマソウの花が咲き始めるころになると無性に見たくなり、よく探しに行ったものだ。ウラシマソウは自宅近くの竹林内に多く生えていた。竹林の中には小さな清水が湧いていて、そこに行けばマムシにもよく会える上、サワガニにも会える場所だった。
ウラシマソウが開花するのは、ちょうどタケノコが出る時期だ。なので、竹林でウラシマソウを探しているとタケノコ泥棒に間違えられ、地主さんに追いかけられたことがあった。竹林を歩いていた理由を話して誤解が解け、顔見知りになった地主のK爺さんからは、ウラシマソウが沢山生えている場所を教えてもらった。K爺さん曰く「ウラシマソウはヘビがカマ首を上げ、舌を出したように見えるからヘビユリと言っている。」それから、「ウラシマソウが生えている所にはマムシがいるから注意しなさい。」とも教えてくれた。その場所は田んぼの駆け上がりで、ウラシマソウを見られただけでなく、何匹ものマムシにも会えてとても楽しかった。中に、とてもきれいなレンガ色の赤マムシがいたことがある。見られてラッキーだった。
(ウラシマソウ/サトイモ科 2022年3月.記)