山地に生える多年草。ツチアケビは葉緑素を持たず、葉が退化している無葉蘭の仲間だ。自生数は少なく絶滅危惧種になっている。私の知っている自生地は6か所で、その中で自生数が一番多い場所は高尾山だ。二十歳の頃は年に4~5回、高尾山へ行っていたが、令和2年に高尾山を題材にした物語が日本遺産に認定されてからは、しばらく足が遠のいた。久ぶりに訪れた時には自生数は半分ほどに減っていた。
私は、道端の露店や道の駅などで、ツチアケビが不老長寿を謳った瓶詰で売られているのを何度か見かけたことがある。ツチアケビ全体、あるいは実をアルコール漬けにしたものが置いてあった。
私は千葉県某所の知人の竹林へ毎年ツチアケビの写真を撮りに行く。そこでは例年10株くらい出ている。8年通っているのだが、なかなか増えてくれない。その知人から完熟した実をもらって薬木園に播いてみた。何回か試したが全く発芽してくれない。ツチアケビは何種類かの共生菌がうまく共生をして初めて発芽するらしいので、これからもダメもとでチャレンジしたいと思う。
何人もの知人がツチアケビの移植を試みたが、これまで誰一人として成功していない。私が見てきた自生地のなかでも、千葉県のツチアケビが一番大きく見事だった。だが、なかなか増えないことを考えると、それはたまたまだったのかもしれない。
(ツチアケビ/ラン科 2022年2月.記)