

トガクシショウマ(和名:トガクシソウ)は本州中部から北部にかけて分布するメギ科の多年草。日本固有種である。山野草ブームの時に盗掘され絶滅危惧種となってしまっている。私が知る自生地は4カ所のみ。どこも自生範囲はすごく狭く、今となっては栽培品の方が多いように思う。
高校生の頃、どうしてもこの花を見たかった私は、名前に“トガクシ”とつくので旧戸隠村(現在の長野市)に何度も通った。地元の詳しい人に出会い色々と教えてもらったり案内をしてもらったりした。そして、この頃にはもうすでに戸隠のトガクシショウマはほぼ取りつくされていたことを知った。50年ほど前のことだ。
その後、尾瀬に通うようになり、そこで初めてトガクシショウマと出会った。わずか30株ほどの、群落とは呼べないくらいの小さな群落が2か所にあった。みな、1~3本立の若い株だ。あまりにも綺麗なのでしばらく見惚れていた。3時間はその場に居ただろうか。山小屋の親父さんに「念願のトガクシショウマをようやく見ることができた」と報告すると、尾瀬でも多くが盗掘され激減してしまったのだと教えてくれた。私が巡り合えた2か所の群落も親株が掘り取られた後の若い株がやっと育ったものだった。
その後3年続けて開花期に尾瀬を訪れトガクシショウマに会うことができた。だが、4年目にはなくなってしまっていた。あまりにもがっかりして、その後は尾瀬から足が遠のいてしまった。
(トガクシショウマ/メギ科 2023年1月.記)