中国中部原産の落葉低木。開花時の花色は白色。時間とともに徐々に桃色に色づき夕方には紅色になる。そして3日目には花托からポロっと落ちてしまう。時間が経つにつれて花弁の色が酔っぱらいの顔色のように赤く変わることから酔芙蓉(スイフヨウ)と名付けられた。
30年ほど前にスイフヨウの八重咲き品種が登場した。花持ちが良く豪華なスイフヨウだ。今では店頭や民家の庭などでふつうに見ることができる。ただ八重の花形はまちまちである。私が知るスイフヨウの八重咲きには大きく分けて4タイプある。具体的には次のようなものである。一重の花の中心部に雄しべが花弁化したものがほんの少しあるもの。一重の花の中心部に団子状に花弁が小さく固まっているもの。さらに、その固まっている団子状の花弁が大きいもの(これは“クスダマスイフヨウ”の名で人気の品種)。全体的に八重のもの。更にそれらの中で、花弁が赤く色づく割合が花ごとに違ったり、縞状に色づいたり、全体が色づいたりと、変化もまちまちなので八重咲き種には何パターンあるのかを調べてみるのも面白そうだと思っている。
現在キャンパスに植栽されている八重咲きのスイフヨウは年によって成長具合が違い固定していない。花弁が固まって開かないまま色づき、そのまま散ってしまったり、腐ってしまったりと、その時の気候条件で変わるように思う。
スイフヨウはハマキムシが付きやすい植物のひとつだ。葉が丸まっているのをよく見かける。中にはハマキムシの幼虫が1匹入っている。何年か前のこと、ハマキムシには悪いがとても興味深い光景を目にした。スズメが3羽やってきて丸まった葉を突きハマキムシを取り出していたのだ。2羽はうまく取れたが、1羽がすごく下手で、慣れていない様子であった。よく見るとその1羽はまだ若い。うまく取れないことにイライラしたのか騒ぎ始めた。おそらく他の2羽の子なのだろう。すると、どこからかヒキガエルが2匹現れて、騒いでいる若鳥の下で止まった。スズメが落とすハマキムシのおこぼれをもらっているのだ。普段のヒキガエルの動きとは全く違い、すごい速さでパクリと食べる。お見事!大きいほうのヒキガエルがスズメにも伝わるくらいの大きな動作で、頭を何回も下げ尻を上げた。まるで「ハマキムシをちょうだい」と頼んでいるように見えた。すると、偶然かもしれないがなんと親スズメがスイフヨウの葉の中から取り出したハマキムシを落としたのだ。幸運にもヒキガエルはハマキムシを食べることができた。スズメ君は結構賢いのでヒキガエルにハマキムシを与えたのだろうと私は思った。なんてこともないワンシーンかもしれないが、私はとても良い光景を見せてもらった気持ちになった。スズメ君サンキュウ。
(スイフヨウ/アオイ科 2023年8月.記)