

エドヒガンザクラとオオシマザクラとの交配で作り出されたとされる落葉高木。日当たりの良い場所に植栽され、樹高10~15mほどに成長する。数多くあるサクラの中でとても有名な品種。日本を代表するサクラである。5枚の花弁は咲き始めの頃はごく淡いピンク色で満開の頃には白色に変化する。花弁の色は年により、また樹により濃淡に多少の違いがある。咲く時期の気温変化でも花色に違いがあるようにも感じる。
ソメイヨシノは基準となる木、数本が決められていたと聞く。人気だったからなのか、あるいは花色を統一するのが目的だったからなのか。それらの木から穂木を取り、接ぎ木をしたものがこれまで日本各地に植えられてきた。そういった個体は遺伝的に同じ、いわゆるクローンである。近年、寿命が近くなってきたのか各地でクローンのソメイヨシノが衰退し始めている。すでに枯れてしまった樹もある。
ソメイヨシノはテング巣病にかかりやすくアメリカシロヒトリやサクラケムシなどの食害も多い品種である。そのため、それらに強い別の品種のサクラが各地で植えられ始めている。その一方で「ソメイヨシノが良い」とこだわる方たちが、実生で“新しいソメイヨシノ”の作出を試みている。
10年ほど前からだろうか。「ソメイヨシノの寿命が近い」と言われるようになり、各地で衰退する様子が見られるようになってきた。実際はソメイヨシノの寿命は明確になっていないのだが、樹は弱ってくると害虫の被害を受けやすくなる傾向にある。特に、ここ20年くらいのことだが、外来種のカミキリムシであるクビアカツヤカミキリが各地で次々と確認されるようになってきた。他の植物も食べるそうだが、クビアカツヤカミキリの幼虫はソメイヨシノが好みのようで、老木となったソメイヨシノを10匹足らずで枯らしたこともあると聞いた。なんとも困った外来種が侵入してしまったものだ。
気になったので、私がよく行く場所付近の何か所かを歩き回って調べてみた。出向いたときに目視で確認したためごく狭い範囲ではあるが、福島県、埼玉県、東京都、千葉県のうち、埼玉県での被害が一番多いように見えた。これから拡大するものと思われる。現在、日本各地でソメイヨシノに代わるサクラとして別種の苗木が植えられているが、日本のサクラの風景はこれからどう変わっていくのであろうか。
(ソメイヨシノ/バラ科 2023年12月.記)