熱帯アジア原産の多年草。古くから薬用や食用として栽培されてきた植物で、野生のショウガは未だに発見されていないと聞く。年配の方が“フサハジカミ”と呼ぶのをたまに耳にすることがある。現在は品種改良が進み、国内では数種類が市場に出回っている。いずれの品種もめったに花が咲かない。
私はここ40年ほど積極的にショウガの花の開花情報を得るようにしているのだが、今までにたった3回しかショウガの花にお目にかかったことがない。ある時、ひょんなことからショウガの原稿を書くことになり、花の写真が必要になった。私は各地のショウガ栽培農家さんに尋ねてまわったが、殆どの農家さんで花を見たことが無いという回答だった。幸いにも一軒の農家さんで数枚を撮影することができ、無事に締め切りに間に合わせることができてホッとしたのを覚えている。
私はショウガの花を見たいと思い、キャンパスと旧八千代薬草園で何年もショウガを作り込んだ。熱帯原産の植物なので冬場は温室に移動して栽培してみたが一度も花は咲いてくれなかった。一昨年、多古町の農家さんから「2株に花が付いたと」連絡があり、急いで写真を撮りに行った。久しぶりに見るショウガの花。だが、残念ながら到着した時にはその花はもう落ちていた。次の花が咲くまでに2日かかると教えてもらったので、何度か通ったのだが、ちょうど良いタイミングで撮ることはできなかった。通ううちに、花穂だけだが撮れた時にはとりあえずホッとしたのを覚えている。それはオオミショウガという品種の大形のショウガだった。その農家さんでは20年近くショウガを栽培されているそうなのだが、それまでに花を見たのは2回だけとのことであった。また、普通のショウガには花が咲いたことがないと聞いた。オオミショウガであっても、貴重なショウガの花を見ることができたのはラッキーであった。
私は45年ほど前に開花状態のショウガの花に出会い、写真を撮ったことがある。だが、フィルムが色褪せてしまったため、その時は「またすぐに撮れる」と思い、捨ててしまった。本当にもったいない事をしてしまったと今でも後悔している。
(ショウガ/ショウガ科 2024年2月.記)