本州中南部~九州の山地に生える落葉低木。日本固有種、雌雄異株。
春の芽吹きと共に淡緑色の球状の花が咲き、沢山の虫たちが集まってくる。特にキバラヘリカメムシをよく見かける。葉が浅く3裂~5裂するが、クスノキ科の樹木には珍しい。歳をとるにつれて葉先は裂けなくなるようだ。同科では他に3裂するものにダンコウバイがある。シロモジは秋の黄葉がきれいなので造園用の樹木として人気がある。高値で売れるためか、盗掘が絶えない樹木である。熟した種子からは油が取れるので、昔は行燈の燃料に利用されたという。
私はクロモジには良く会うが、シロモジに会うのは稀だ。よく行く筑波山には幸運にもシロモジが数本あるので、会うとテンションが上がる。だが、ほど良い高さまで成長すると決まってある日突然無くなる。盗掘されてしまったのだろうか。なので、出会ったシロモジには「盗られるなよ」とつい声をかけてしまう。
シロモジは葉の形が魅力の一つ。出始めの3裂した新葉を逆光で見たときなどは特にその美しさは何とも言えない。カエデのような、カエルの足のような形が時に良い。秋には葉を黄色から徐々に赤く染め上げる。冬芽の丸い花芽の愛くるしさも魅力的だ。
シロモジに会えると私のテンションが上がる理由。それは、シロモジの自生分布が私の活動範囲外の本州中部から九州であるということだ。だが「自生分布」は私にとっては、あくまでも「非常に有難い“参考資料”」である。自生地域とされる場所以外で私は実際にたくさんの植物達に会ってきた。それらが自生地域外に生えている原因は私には解らないが、自生状態を注意深く観察してみると気付くことがある。生えている場所が、人為的に運ばれたとは考えられないような場所であったりするのだ。その個体が「おそらく自生であろう」と私の中で結論付けた瞬間には何とも言えず鳥肌が立ったり、植物によっては涙が出てきたりしたこともあった。
最近はそういう出会いがすごく少なくなってきたと感じている。私が今まで見てきた地域で特に興味を引く地域は房総地区と単独峰の筑波山を含む筑波周辺である。この話はまたいずれ書きたいと思う。
(シロモジ/クスノキ科 2022年4月.記)