中国原産の落葉低木。寒中から蝋細工の様な半透明の黄色い花を咲かせる。新年に咲く印象が強いが、早い年には、秋のまだ葉が落ちない11月下旬頃に咲くこともあった。花が咲きはじめると、あたり一帯に良い香りが漂い、春が来るのを感じさせる。50年ほど前は薬草園や植物園でしか見ることができなかったが、現在は観賞用として公園や個人宅の庭に植えられているのをふつうに見かける。各地のロウバイ園も人気だ。
私はロウバイが咲く時期になると、中学1年生の時に初めて出会ったロウバイを思い出す。匂いに誘われたのか、真冬でもハナアブやハナバエがそのロウバイの花に来ていたのだ。その頃は花芯が赤紫の色の、原種に近いロウバイしか見たことがなかった。
その後、品種改良により花弁が黄色一色の素心のロウバイが出てきた。従来のものよりも高値で取引されるようになり、今ではこの素心が原種ロウバイにとって代わり主流となった。観賞用が主流になると品種改良が進むので、現在はマンゲツロウバイやフクジュロウバイなど、多くの品種が存在する。これまでに園芸店などで観賞用として15品種以上が売られているのを確認した。また、品種改良されたロウバイが山中で野生化したと思われる個体も、これまでに数本見ている。
私は以前、ロウバイを増やそうと挿し木を試みたのだが、殆どが付かず、失敗した。その後園芸雑誌の記事を読んでわかったことだが、ロウバイは挿し木には向かないらしい。また、秋には沢山の実を付けるので、実生でも挑戦してみた。地植えでうまく成長し、花が咲くまでには7年かかった。一方、同じく実生から鉢植えで育てたものは14~15年がかりでやっと花が咲いてくれた。面白いことに、花形や花弁の濃淡など、みな個々に微妙な違いがあり、自家受粉でも結構楽しめることを実感した。その時のロウバイを薬草園と八千代薬草園に植えた。植えた個体は原種に近いもので、薬草園のロウバイは今では4mほどの高さに育っている。
(ロウバイ/ロウバイ科 2021年12月.記)