北米原産の多年草。薬用や観賞用として栽培される。大きく開いた葉の下で愛くるしい白い花をやや下向きに咲かせる。
30年ほど前にはポドフィルムはまだ珍しい植物で、植物園か薬草園でしか見ることができなかったように思う。別名が“アメリカミヤオソウ”や“アメリカハッカクレン”だといえばピンとくるだろうか。
近年は近似種のハッカクレンの知名度が少しずつ上がってきた。そのお蔭か、ポドフィルムにも目が向けられるようになってきた。赤黒い花のハッカクレンに対し、白い清楚なポドフィルムの花が注目されるようになったのだ。ポドフィルムは基本的に一茎一花の植物だが、これまでに一茎二花、三花も見たことがある。一茎二花のものは新芽が出て花芽が目立ってくると、まるで小人がそこに立っているように見えるのは私だけだろうか。
ポドフィルムがまだ一般には流通していなかった30年ほど前のこと。私は山野草展を覗きに行った。そこで山野草展に出展していた知人のSさんに会ったのだが、展示中のポドフィルムを指して「川上さん、この植物が何か知ってる?」と尋ねられた。話を聞くと「なんだかわからない変わった植物だけど、葉に縞が入っていて綺麗だから分けてもらった。でも分けてくれた人も名前がわからないと言っていた。」とのことだった。私が「ポドフィルムですよ。」と即答すると、「何だ?もう一度言って?」とSさん。私は「ハッカクレンに近い植物で、ポドフィルムという植物ですよ。」と、少し説明を加えた。Sさんは「そうか、ありがとうね。これで札に名前が書ける。」と喜んでくれた。
今ではホームセンターなどでもたまに販売されているのを見かけるようになってきたが、まだ数は少ない。やはり作るのに年月がかかることが影響しているのだろうか。その後、Sさんが展示していたようなあの綺麗な白縞斑のポドフィルムを見ていないので、その時の株は増えずに枯れて無くなってしまったのかもしれない。もしそうであれば残念なことである。誰かの作棚で元気に成長していれば良いのだが。
ポドフィルムは増え始めるとどんどん増えてくれる。だが、根茎1節だけで植え付けたり、小苗の状態で植え付けたりするとなかなか作上がり(親株よりも大きく成長すること)しない。3~4年で一芽が増えるだけ、という成長具合が続くので、じれったくなる。早く育てようとして肥料を多めにあげると肥料負けをしてしまう。ちょっと気難しい植物だ。
旧八千代薬草園で初めて植えたポドフィルムは根茎4節くらいの株だった。それを3株植えた。掘り上げずに10年ほど植えっぱなしにしておいたところ、開花する地上茎が100本ぐらいまで増えた。もちろん日頃の手入れは欠かさなかった。
ポドフィルムをうまく作るポイントはいくつかある。株分けの際には根茎や根を乾かさないように大きく株分けする。半日陰に植え、肥料は与えすぎない。その後はほどほどに散水するのが栽培のコツである。
(ポドフィルム/メギ科 2022年12月.記)