南アメリカ原産の多年草。日本では一年草とされるが、冬の寒さに耐えられれば何年でも持つ。私が子どもの頃は、あまり見かけなかったが、近所の花好きのI爺ちゃんが苗を分けてくれたので、庭で育てていた。
私は庭に咲いたオシロイバナの花を高い場所から落として友だちとよく遊んだ。オシロイバナの花をガクから離すと若い実が見える。実を指でつまんで花を軽く引くと、中を通っている雌蕊が糸のように出てくる。雌蕊を1.5cm位引き出せば、若い実をおもりにしたオシロイバナの落下傘の完成である。友だちと一緒に近所の6階建てビルの屋上に上がり、オシロイバナの落下傘を落とした。誰の落下傘の滞空時間が一番長いかを競争したのだ。その遊びの中で、どんな花を選べば良いのか、どのくらいの長さに雌蕊を引き出せば滞空時間が一番長いかなどを試していた。滞空時間は風などの条件によっても違うということをその時に学んだ。やはり花が大きいもののほうが長く、私の作った落下傘はまあまあ良い成績だった。下から見ていたビルの管理人から「危ないからやめなさい!」と、よく叱られたのも今となっては良い思い出だ。他には、オシロイバナの完熟した実の中を取り出してすり潰し、白い粉を顔に塗っては「花魁!」と言って見せ合って遊んだりもした。
オシロイバナというと私はオオスカシバを思い出す。オシロイバナは一日花だ。夕方に咲いて翌日の昼頃にはしぼむ。だが、次々に花を咲かせる。そこへ、夕方によくオオスカシバがやって来た。私はオオスカシバの、ホバリングをしているような独特な飛び方を面白いなと思いながら見ていた。ある時、オオスカシバの幼虫の食草がオシロイバナではなくクチナシだと知り、すぐにI爺ちゃんにお願いをしてクチナシの枝をもらって挿し木をした。そのクチナシにオオスカシバが来るのを待ちわびていた。翌年の初夏にクチナシにオオスカシバの幼虫を3匹みつけた。彼らは大食いでクチナシの木を丸坊主にしてしまった。クチナシの葉は堅いのでガサガサと音がしていたのを鮮明に覚えている。
(オシロイバナ/オシロイバナ科 2023年6月 記)