中国原産の帰化植物で、ヒガンバナ科の多年草。
薬用の他、観賞用として楽しまれている。花期は夏。葉よりも先に花を咲かせる。薄暗い木陰で薄紫色に見えるピンクの大きな花がとても目立つ。
ナツズイセンは毒草なので扱いに注意が必要。もちろん食べてはいけないが、傷のある手で触らないように気をつけたい。
そういえば、子どもの頃、「毒のある植物は屋敷に植えるものではない」と、じいさまによく言われたものだ。私は変わり者なので、小学生の頃からヒガンバナ科のキツネノカミソリが好きで、実生で増やし、家の近所の空き地に植えてまわっていた。その後の宅地開発で、植えたものはすべて無くなってしまった。我が家には、その時からの子孫が今も元気に花を咲かせている。これも毒草だ。
ヒガンバナ科の植物は、‘変化’が殆ど無い。その中でも特に‘変化’が無い植物がナツズイセンだ。見たいと思い、かれこれ50年くらい探しているのだが、噂すらも聞かない。
だが、20年ほど前のこと。薬草園で、ほんの少しだが花色が白味を帯び、‘変化’の兆しを見せる個体がいくつか出てきた。これは3年ほど継続したのだが、残念ながらその後は見ることができなくなった。40年以上前の入職当時に植えられていた2球から増やしたナツズイセンだった。
少し前に、いわゆる、ちょっとしたヒガンバナブームが起きた。埼玉県にあるヒガンバナの群生地、巾着田が有名だ。ナツズイセンは、そのブームに乗って「ヒガンバナの仲間」として園芸店などでも売られるようになった。
(ナツズイセン/ヒガンバナ科 2022年2月.記)