

山野に生える多年草。以前、関東の某所ではムラサキを増やしたいがために、あろうことか西洋ムラサキを山に植えた。その結果、西洋ムラサキが増えたり、在来種のムラサキとの交配種ができたりして現在に至る。その当時は西洋ムラサキとムラサキが同じものだと思われていたらしく、このような事がおこってしまったのだ。
私は以前入手したムラサキは、後でわかったことだが西洋ムラサキとの交配種だった。その株は、2年くらいはムラサキの様相をしていたが、それ以降になると西洋ムラサキの特徴が出現して、とてもムラサキとは思えない個体がどんどんでてきた。訳がわからなくなった。ムラサキは知れば知るほど悩む植物である。私は今もムラサキを探しているが、“完全なるムラサキ”には出会ったことがない。いつかは出会えると信じてこれからも探し続ける。
以前、「間違いなく“在来種のムラサキ”だ」という株を頂いた。育ててみたところ結果は曖昧だった。在来種のムラサキにも見えるし西洋ムラサキの特徴も出ている。
私はこれまでの経験上、“在来種のムラサキ”といわれる個体は5年作って花を観察してみると、どちらなのかはっきりすると考えている。それがもし西洋ムラサキとの交配種である場合、5年を過ぎる頃になると株が大きくなるのだ。“在来種のムラサキ”といわれたその個体は実生2年目ぐらいから花が咲きだし、その後2~3年は白い花が咲いた。だが5~6年目には急に株が大きくなり、花は白ではなく薄緑~黄ばんだ色になってきた。薬草園を訪ねて来られる他大学の先生方も、それを見ると「これは西洋ムラサキなのではないか。」と言われる。私はこれまでの結果から「本当のムラサキは日本にあるのだろうか?」と疑問に思ってしまう。現在の技術ならDNA鑑定で確かめることは可能であるが、実施したという話もほとんど耳にしない。
(ムラサキ/ムラサキ科 2022年12月.記)