ムクロジはもともと南方系の樹木といわれていて、国内では茨城県、及び新潟県以南の本州、四国、九州の山地に生える落葉高木。お寺や神社では推定樹齢100年を超えていそうな古木を見ることがある。
ムクロジの実は熟すと黄土色になる。乾燥して果皮がシワシワになったものを軽く押すと簡単に割れる。中の黒いタネを取り出して果皮をペットボトルなどに入れ、ぬるま湯を入れて振ると泡立つ。この泡立った液体を洗剤として使うことができる。手や髪を洗うこともできる。かつて私も、ジュースのビンの中で泡立てた液を使って試しに洗髪をしてみた。また、取り出した黒いタネは昔から正月遊びの羽根つきの羽の玉に利用されてきたという。
高校1年生の時、私を可愛がってくれた植物馬鹿( 愛情を込めて )のN先生にムクロジを教えてもった。その時に、N先生が「実を石鹸のように使える」というので、試してみた。実際に手洗い、洗髪、衣服の洗濯など色々と試した。手洗い、洗髪に関してはそれなりに汚れが落ちたように感じたが、服の汚れにはあまり効果が無いように見えた。なので、後日、洗濯板を使い再度洗ってみると、汚れが結構落ちてちょっと感動したことを今でも思い出す。
その頃の私は木本についてあまり知識が無く、在来種の6割ほどしか知らなかった。はっきり言って木にはあまり興味が無かったのだ。草本は、手持ちの図鑑の9割ほどは知っていたと自負している。草本に関しては、新しいものを見るとなぜかとても嬉しかった。
一方で、N先生は草本については全くと言っていいほど知らなかった。私はN先生から木本を教えてもらい、N先生は私から草本の話を聞き、お互いウィンウィンの関係にあった。年齢は私の兄貴と同じなこともあり、先生というより兄貴みたいな存在だった。その頃、N先生に教えてもらうことは何でも、初めて知ることが多く、当時はN先生に言われたことは、すぐにとりかかっていたように思う。N先生のお蔭で、この頃に私の第2の下地ができたのかもしれない。有難い事である。私の中でN先生の存在はとても大きかったと思う。
(ムクロジ/ムクロジ科 2021年12月.記)