
水田やきれいな溜め池などの浅瀬に生える。植物全体が水中にあり、浅い水底に根を張る多年生の沈水植物だ。ロゼット状に葉を広げ、大きいものは直径40cmほどに成長する。環境による変化が大きい。花期は夏から秋。水中から花茎を伸ばし水上に一日花を咲かせる。
ここ20年の間にミズオオバコがあると教えられた場所を何ヶ所か訪ねた。だが、行ってみると「去年まであった」とか「○年前まではあった」と現地の方に言われることが増えてきた。数を減らしているようだ。ミズオオバコの他にも貴重な水生植物たちが激減している。水田用の除草剤の影響もあるのだろうか。“辛うじて生えている”といった様子の場所を見つけても、数年後に行ってみるとほとんどの種が消えてなくなっている。ミズオオバコは絶滅危惧種となり、今では探してもめったにお目にかかれなくなってしまった。
私は3年ほど前から福島県に行く機会が増えた。そこで知り合った人とミズオオバコの話になった時に、彼の所有するハス園に生えていることを知った。それも沢山。ミズオオバコは他の水生植物の邪魔になるそうで、彼は部分的に抜いて捨てているということだった。私は不要な株を分けてもらい、薬草園で栽培を始めた。
翌年の夏にたくさん開花した。40輪くらい咲いただろうか。ミズオオバコの花を生で見るのは60年ぶりのことだ。その株は、大きなものでロゼットの直径が30cmほどで、これまでに見てきたミズオオバコより一回りから二回り大きく立派なものであった。
栽培をしてみると、ミズオオバコは水質が悪化したり水温が上がり過ぎたりすると葉が溶けるように枯死してしまうことがわかった。また、栄養が不足すると成長できずそのまま溶けて枯死する。過密状態で栽培すると負けたものが枯死、あるいは共倒れになるので、元気な株を残して間引きしてあげることをおススメする。また、発芽した直後のタネは浮遊しているので、見つけたら水底に着けて上げると良い。
ミズオオバコは半日陰を好むが、あまりにも日に当てずに栽培すると葉が大きく茂ってしまう。それはそれでみごとではあるが、そのせいで花付きが悪くなるので、花を楽しみたいならほどほどの日に当てるのが良い。
肥料は土だけでなく水にも多少与える。だが以前、液肥を水に直接溶かしたところ、あまり良くなかった。肥料の濃度が高かったようだ。そこで、私は昔ながらの水生植物栽培法を試した。身欠きニシンを使う方法だ。身欠きニシンを小さく切り、ミズオオバコの根元に刺しておいたところ、これが良かったのか次から次へと花を咲かせてくれた。タネもたくさん採れた。今年も無事に発芽、成長して花芽を持ち始めたのを確認した。全体としてはまだ小ぶりな株だが何とか花を付けてくれたので一安心だ。
ミズオオバコはタネができた後の水温が高いと発芽してしまう。そして冬を越せずに枯れてしまうので、タネの時期はできるだけ水温が上がらない涼しい場所で栽培する。採集したタネを保存するには水に浸して冷蔵庫に入れると良い。
当薬草園のミズオオバコを観察してみると、春に水温が24度を超えると発芽するように見えた。
(ミズオオバコ/トチカガミ科 2024年7月.記)