

丘陵地や日当たりの良い山野に生える多年草。30年ほど前はどこに行っても普通に見られた。5弁の黄色い花を咲かせるので、開花時期の春に林に行くと、同じく黄色い花を咲かせるキジムシロやヘビイチゴなどと混生して一帯が遠目に黄色く見えていた。また丘陵地ではタンポポやジシバリ、オオジシバリ、ニガナなどと共に景色を彩っていた。近年では宅地開発や除草剤の散布によりかなり減っている。
小学2年生当時、私にはミツバツチグリもキジムシロもヘビイチゴも同じに見えていた。翌年の初夏、林で混成する黄色い花たちのなかに白い花が一株あるのを見つけてすごく興味を惹かれた。家に持ち帰り図鑑で調べるとミツバツチグリのようであった。それを鉢植えにして植物に詳しい近所のI爺ちゃんに見せに行くと「ミツバツチグリに間違いない。これはその白花で今まで見たことがない。珍しいから大事に育てなさい。」と言ってもらった。私も初めて見た白花のミツバツチグリだ。だがその頃の私はまだ植物栽培にあまり自信がなく「枯らしたらどうしよう」という思いからI爺ちゃんに育ててもらうためにその鉢植えをあげた。その後どうなったのかは分からない。いつも気にしながら山野を歩き、いつかは写真に収めようと探しているが未だに見つからない。今思えば非常に貴重な植物であったのだろう。知人や山野草展などで聞いてみたが誰もミツバツチグリの白花を見たことがないと言う。更に貴重さを実感した。当時は、一株見つかったのでまたすぐに見つかると勝手に思い込んでいた。おまけにどこにでも生えている植物なので軽い気持ちで接していたように思う。
何年か前に筑波山麓の田んぼの駆け上がりでミツバツチグリの八重咲きを見た。翌年、楽しみに行ってみると無くなっていた。残念に思いながら他の植物の写真を撮っていたら犬の散歩をしていたおばさんに「なに撮っているの」話しかけられた。私が「去年ここに珍しい植物が咲いていたからまた見に来た」と、どんな花なのか説明し、去年とは様子が全く違っているのでおかしいと思っていると話すと、衝撃的な言葉が返ってきた。「草刈りが大変だから去年から除草剤をかけてるよ」。手入れをしていた方が高齢になり草刈り機の使用が危ないからと除草剤を散布することになってしまったらしい。そんなことなら去年採っておけば良かった!!!それ以後ミツバツチグリの八重咲きとも会えていない。
(ミツバツチグリ/バラ科 2023年12月.記)