日当たりの良い山野に生える多年草。生薬として利用される重要な薬草のひとつ。
ミシマサイコは宅地開発や乱獲により近年では数を減らし、絶滅危惧種になってしまった。私がこれまでに見たミシマサイコの自生地は3か所のみで、残念なことに、今そこにミシマサイコの姿は無い。宅地開発や乱獲が原因であるが、自生のあった山が手入れされずに放置された結果、荒れてしまい、下草に日が当たらなくなったことが原因のひとつではないかと私は思う。
私が薬草園で仕事を始めてすぐに、当時の薬草園長からミシマサイコの栽培依頼を受けた。八千代薬草園で栽培を始めたのだが、初めて栽培する植物のため最初は何もわからなかったので、栽培生産者からアドバイスをもらった。大まかには次の3つのようなことだった。まず、ミシマサイコは日の当たる場所で栽培する。そして、収穫は「実生4年で」と言われたので、それに従い栽培をしてみた。また、根を枝分かれさせるために畑に砂利を混ぜるとも教えてもらったのだが、私は次の作物のために畑に砂利を混ぜずに栽培をした。
私は八千代薬草園約2,000平方メートルいっぱいにタネを播いた。だが3年目に3割ほどが枯れてしまい、4年目には更にその6割が枯れ、最終的に全体の3割くらいしか残らなかった。
そこで前の年にタネを播いて成長途中の、まだたくさん残っていた“2年根”で収穫をした。根を枝分かれさせずに栽培したため、「主根1本で形が悪い。」と言われたが、成分には全く問題がなかった。なので、以後は実生2年で収穫することにし、安定して栽培ができるようになった。
後に、アドバイスをくれた栽培生産者にこのことを話したところ、暫くしてから「他の栽培者も2年根で収穫するようになったよ。」と聞いた。
(ミシマサイコ/セリ科 2022年3月.記)