薬用や食用、観賞用として栽培される常緑低木。ウンシュウミカンと共に広がった。ウンシュウミカンと比べて寒さに強い。もとは観賞用に庭木として植栽されたと聞く。後に、食用や薬用としても使われるようになった。
鉢植えのキンカンは短期間で実がなるので、観賞用としての“実物(みもの)鉢植え”として売られてきた。実生では実がなるまでに6~8年かかるが、接ぎ木苗で作られた鉢植えでは2~3年目には実がなる。地植えの場合でも接ぎ木苗から育てれば、同じように短期間で実がなる。
小さくて可食部分が少なかったキンカンの実は、様々な改良が重ねられてキンカン生産地でブランド化が計られた。近年では、実が大きなものやタネ無しの品種などが作られ店頭で見かけるようになった。有名な産地は宮崎県で、ハウス栽培が知られている。
昔のキンカンの実は今よりも小さく、タネが大きかったように思う。果肉が少なく、酸っぱくて生食には適さなかったため甘露煮にした。私はそれを、ちょっと風邪気味だなと思った時やおやつの代わりに食べていた。大きく、食べやすくなったキンカンは、昔と今とではまるで別の食べ物になったように感じる。
キンカンの実は、摘果することにより枝に残した実を大きく育てることができる。また、大きくなった実を木で完熟させてから収穫することにより糖度を高くすることができる。
(キンカン/ミカン科 2022年3月.記)