山野に生える多年草。私はこれまで筑波山や高尾山、丹沢、北アルプス中腹などの山地帯から亜高山帯に自生しているキクザキイチゲを見てきた。
キクザキイチゲの花の大きさは2.5cmほどの小さなものから、4cmを越える大きなものまである。低山帯より亜高山帯の個体の方が、背丈が低いため花が大きく見えるので、見応えがある。花弁状のガク片はおもに一重だが、なかには八重咲きもある。花色は白色、淡桃色が主で、自生地や株により異なる。他に桃色、濃桃色、紫色、濃紫色などがある。
かつて北アルプスの麓では白いキクザキイチゲが見渡す限り一面に生えていたが、現在は乱獲や盗掘などでかなり減ってしまった。だが、保護をすれば現状を維持できるくらいには残っているので、すぐにでも保護をして、せめて現状を守りたい。そう思い、地元の方に保護の方法を提案したのだが、見た目に沢山あるからなのか、関心が無いようであった。
習志野キャンパスにはキクザキイチゲがある。白馬岳麓にある林の地主さんと知り合って分けてもらった1本から増えたものだ。植えてから約40年になるが、その1本から増えたのは、わずか三畳分ほどだ。これは植えっぱなしだからだと思う。敢えて人の手を加えない、いわゆる自然状態での増え方としてはこのぐらいなのだ。だからこそ、自然界で乱獲をされたら元の数に戻ることは不可能かもしれない。植え替えをし、株分けをすれば何倍にもなると思っている。
(キンポウゲ科/キクザキイチゲ 2022年3月.記)