本州、四国、九州の沢沿いや林のふちに見かける蔓性落葉植物。もともと自生数が少ないうえに盗掘による激減で絶滅危惧種になってしまった。
カザグルマは“変化”の多い植物である。花弁のように見えるのはガク片で通常8枚。花色(実際はガク片の色)の主流は白色だが稀に紫色や淡赤紫色など、変化に富む。花の大きさは小さいもので5cm、大きいものは10cmほどと約2倍の差がある。花芯は紫色。花弁(ガク片)の形は“梅弁”と呼ばれる梅の花のように丸みを帯びたものや、“剣弁”と呼ばれる剣のように先が細く伸びたものなど様々。中には弁先が細く尖る個体や波打つ個体などがあり、本当に多様なのである。
私が住んでいる千葉県にも自生地が何か所かある。そのうちの一つがキャンパスのある船橋市だ。ここの個体は花形の変化はあるが、花色はみな白色だ。少し前に“船橋のカザグルマを守る会”の会長さんからカザグルマの保護・維持に関する相談があった。私は“船橋のカザグルマ”の苗を分けてもらい、相談に応えるために実生を試みている。
春に咲くカザグルマのガク片はどの個体も8枚だが、秋に咲く花では枚数が3~12枚と個体差が出る。花芯は紫色だと思っていたが、紫色~白色まで様々なものが咲いてきた。分けてもらった苗はみな“純粋のカザグルマの挿し木個体”と聞いているので、そのつもりで栽培を続けている。栽培をしてみるとカザグルマの知らなかった性質がわかってきて、徐々に自分の中のカザグルマの常識が塗り替えられているところである。これから栽培を進めてゆくと、また新しいことがわかるかもしれない。
昨年は分けてもらった“船橋のカザグルマ”が初めて開花した。1年前に分けてもらった苗の栽培開始以来、初めての花だ。この花で自家受粉を行ってタネを取ることができたので播いてみた。発芽まで2年かかるが、それも楽しみである。
船橋市内の小学校に自生するカザグルマがある。その株から採った枝を挿し木した苗を育て、実を収穫することができた。その実を日本大学と当薬草園で先駆け実験として播いた。今年で2年目になる。草丈の成長速度や葉の形や大きさなど、成長にかなりの個体差が生じている。どんな花を咲かせてくれるか楽しみである。
(カザグルマ/キンポウゲ科 2024年1月.記)