カンアオイは山地の尾根沿いの日陰で見ることができる多年草。地方によって変化があり、変種も多い植物である。「カンアオイ」という名称はカンアオイ類の総称として使用する場合と、カントウカンアオイを指して言う場合がある。ここではカントウカンアオイについて書こうと思う。
カントウカンアオイは薬用の他、観賞用として楽しまれる植物。地際に三角形の地味な花を咲かせる。観賞用の山野草として人気が出たため乱獲が進み、今では自生種が激減している。
カントウカンアオイは産地によって葉模様にとても変化が多く、マニアに大人気だ。模様の無い「無地」の他、「亀甲模様」、「白ゴマ斑模様」、「藤模様」、「(それらの)複混模様」や「斑入り」、「素心」など本当に様々だ。全体の大きさも、ごく小さなものから直径25cmほどになる大きなものまで存在する。もしかすると、カントウカンアオイを見慣れた人でも、初めてこれらの株を見たら、「別種ではないか?」と思うかもしれない。
以前、私はカンアオイ展や山野草店で数十万円の株をいくつも目にした。古典園芸植物として江戸時代から人気があり、特に素心や斑入りのものは今でも高値で取引されている。1990年代にバブルがはじけた後に、10分の1から100分の1くらいの価格になったものもある。一時に比べて安定してきたが、それでもまだまだ高価な植物だ。
カンアオイの仲間の多くは成長が非常に遅い。私が実生で栽培していたカントウカンアオイは、開花までに早くて6年。平均で8年かかった。品種によって成長の違いはあるが、とにかく時間がかかる植物だ。
自生状態でも殆ど成長しない。花後にタネが落ち、葉は枯れずに残る。実生では花後、その根元に新芽が数株見えるが、翌年には殆どが枯れている。なので、なかなか増えることがない植物だと言っても過言ではない。
カンアオイの仲間のタネは根元に落ち、自力で遠くに行くことは無い。動物や昆虫、大雨の影響などで移動するのだろうと私は思っている。
(カントウカンアオイ/ウマノスズクサ科 2022年1月.記)