

中国原産の落葉低木。原種のバラの一種ロサ・ロクスブツギイ(Rosa roxburghii)の八重咲きの栽培品が一般にイザヨイバラと呼ばれる。花色はピンク。開花した花の一部が欠けているのが特徴で、その姿を満月を過ぎた十六夜の月(いざよいのつき)になぞらえて名付けられたという。木には棘がたくさん生える。
よく似たバラにマイカイがある。マイカイの花はイザヨイバラより花色が濃く花弁数が少ないことで区別できる。また、マイカイは花に欠けがない。葉姿も違う。だが時々、花の一部が欠けたマイカイを「イザヨイバラではないかと思うのだが」という問い合せがある。花だけでは鑑定しづらい個体もあるので葉の付いた枝ごと、可能であれば株ごと見て鑑定できると良い。
私が初めてイザヨイバラを見たのは中学2年生の頃。近所のHさんが栽培していて大きな株になっていた。「珍しい花が咲いたから見においで」と誘ってもらい行ってみると、20花ほど咲いていただろうか。綺麗なバラなのだが、私が思い描いたようなまともな花が無く、どれも皆どこか欠けていた。確かに珍しいと思った。図鑑では見たことがあったが、その頃はまだ珍しく、あまり実物を見ることができない植物だった。確かにイザヨイバラであった。
イザヨイバラはほとんど結実しない。挿し木で増やすことができるが、他のバラに比べて発根率が低いため、できるだめ多く挿すと良い。株元から出るひこばえと一緒に株分けをする方法もある。ただし、親が接ぎ木である場合には台木の苗と間違えないように注意が必要である。
(イザヨイバラ/バラ科 2023年12月)