北アメリカ原産の多年草。40年ほど前、日本ではとても珍しい植物だった。なので、私は植物園に行けば見られるかもしれないと思い、とある植物園に行った。そこでイヌオシロイバナがあるかを尋ねたが、残念ながら植栽は無く、存在すらも知られていなかった。本当に珍しい植物だったのだ。
私はイヌオシロイバナを図鑑で見て知ってはいたが、実物を見ることを半ば諦めていた。それが、東邦大学に就職し、習志野キャンパスの薬草園で初めて本物のイヌオシロイバナを見たのだ。当時聞いた話から推測すると、久内先生がどこからか譲り受けて植栽されたものと思われる。感謝だ。イヌオシロイバナを見ると今でも「縁が有り、ここに来た甲斐があった。」と感激した日のことを思い出す。当時、上司にそのことを話したら「あ、そう」とあっさり返されて急に寂しくなった事もまた思い出だ。それから、私が子どもの頃にイヌオシロイバナを見た図鑑の著者が、東邦大学を退職された久内先生だったことを後から知った。
今でもあまり知られていないようなイヌオシロイバナだが、昨年の春にこんなことがあった。キャンパスの正門まわりの工事が終わり、正門前の歩道には街路樹としてハクウンボクの苗木が植えられた。なんとその根元からイヌオシロイバナの若苗の芽が出ていたのだ。それを見て私は無性に嬉しくなった。
(イヌオシロイバナ/オシロイバナ科 2023年6月.記)