ヒガンテンナンショウはサトイモ科テンナンショウ属の植物。テンナンショウ属の中で最も早く咲く種類だ。房州では早いもので2月中旬~春の彼岸の頃に咲き始める。
私がこの花を見るためによく行くところは沢沿いで、他にもミスミソウやイワタバコなど、色々な野草が生えている。そこは山仕事道で、道の両脇にヒガンテンナンショウが沢山自生していた。30年ほど前に「テンナンショウ属の新種かもしれない」と噂されたことがあって急に盗掘され、今では4分の1ほどの数になってしまった。その沢沿いには、ミスミソウの白花や淡桃色のものも自生していた。20年前の話だ。今では完全に姿を消してしまった。
ヒガンテンナンショウは姿かたちや臭いのせいで嫌がられる。沢沿いでは4分の1ほどに減ってしまっているが、なんとか数を増やしたいので、私は自生するヒガンテンナンショウの実を採り播こうと思っている。だが、毎年のように、開花した花が刃物で片っ端から切り取られ、捨てられてしまっている。時には地際から刈り取られてしまっている。こんなことをしていたら数少ない貴重なヒガンテンナンショウが無くなってしまう。何のために切るのか?と、頭に来ながらも散策を続ける。おそらく、切る人はこの植物が貴重であることを知らないのだろう。ここ6年ほど、その繰り返しだ。
ヒガンテンナンショウは、花が咲くと腐肉のニオイがするらしく、そのニオイを好むハナバエやハナアブなどが苞に止まっているのを見かける。ヒガンテンナンショウが開花する2月中旬は、活動している昆虫がまだ少ない。受粉を助けてもらうために、気温が低くても活動できるハナバエなどに合わせて腐肉のニオイをさせているのだろうか。
テンナンショウ属の専門家Bさんに聞いたところ、ヒガンテンナンショウは現段階では新種の「可能性のある」植物とのことだった。
(ヒガンテンナンショウ/サトイモ科 2022年3月.記)