

国内では北海道に多く分布するバラ科の落葉低木。薬用のほか観賞用として栽培される。本州の太平洋側では茨城県、日本海側では鳥取県を南限として海岸線に自生する。私がよく行く茨城県鹿嶋市にハマナスの自生地がある。国の天然記念物に指定され、現在は囲いの中で保護されている。その一方で、柵の外側で自生するハマナスは頻繁に掘り取られている。とても残念なことだ。
花は5弁の一重。紅赤色の花を咲かせる。実は夏の終わり頃に赤く熟す。木の幹には細かい棘がびっしりと密に付く。棘は折れやすいので触るときには刺さらないように注意が必要だ。
1970年頃のバラブームに乗り“原種のバラ”の一つとして販売されるようになった。また、ハマナスを親にした交配も行われ、多くの品種が作り出されてきた。現在は白色や黄色の花、八重咲き種なども店頭で見かけるようになってきた。
海岸沿いの防風林の中にハマナスが生えている場所があった。愛犬のラッキーと一緒に海岸へドライブに行き、遊びながら散策をしていた時のこと。先を歩いていたラッキーが私を呼びに来たので着いて行くと、高さ2mほどのハマナス林があった。ラッキーはハマナス林をすり抜け私を呼ぶ。見回すとハマナスとトベラだらけだ。迂回して行こうとしたがラッキーが「フーフーフー(こっちだよ)」と言う。仕方がないので、意を決しハマナス林の「見た目最短ルート」に突入。わずか10mほどの距離だったが、私の手は擦り傷だらけ。そのうえ何か所か棘が刺さった。どうにか抜けてラッキーの後を追った。ようやくラッキーが立ち止まり「これだよ」と教えてくれたのがとても綺麗な赤マムシ。彼は鎌首を上げ私達を威嚇した。「ラッキー、ありがとうね。」とお礼を言い、私は赤マムシの写真を撮りながらしばらく観察をした。赤マムシは鎌首を持ち上げたままの状態でしっぽの先を震わせた。それが落ち葉に当たりカサカサカサと音を立てた。心地良いリズムだ。「お前の敵じゃないよ」と声をかけるとスーッと逃げて行った。とても綺麗なレンガ色のマムシ君であった。その後もラッキーは私を3匹のマムシに会わせてくれた。帰宅後2日ほどすると腕が痛みだした。ハマナス林で作った切り傷が5か所化膿していたのだ。膿を押し出すために指でつまむとハマナスの棘が一緒に取れた。棘は刺さったがとても楽しい散策であった。ラッキーにはいつも良いものを見せてもらった。今も感謝している。
(ハマナス/バラ科 2023年12月)