薄暗い林床に生える多年草。周囲の樹木と外菌根を形成し共生する菌従属栄養植物。以前、腐生植物と呼ばれていたもの。 ギンリョウソウは葉緑素を持たず、全体が白く透けている。ユウレイソウと呼ばれている地方もある。果実は液果で、熟した後に植物全体が倒れて種子を播き、消えるように無くなる。この時、においに釣られて集まってくる昆虫たちがいて、ギンリョウソウは彼らの体に種子をつけて運んでもらっていると言われている。
ギンリョウソウはツツジ科に分類されている。以前は、花の形態がイチヤクソウに似ているという理由でイチヤクソウ科。その後、全体の形態がシャクジョウソウに似ていることからシャクジョウソウ科に分類されていた。葉緑素を持たない腐生植物であるギンリョウソウをめぐっては、かつて、「植物なのか、菌類なのか。」という論争があったと聞く。未だ解明されていない部分の多い植物なので、これから新しいことが解ってくると、また科が変更になる可能性がある。
私が出会ったギンリョウソウは登山口近くのうす暗いクマザサ林内や、苔むした場所に生えていて、1~2本ばかりの株が多い印象だった。別の、標高の低いところにある林では、大株を見かけた。数えてみると18本もの大株だった。
柔らかい植物なので、全体の傷みが早い。風にもまれたり、何かに触れられたりすると、すぐに褐色化する。そのため、きれいな、良い状態の写真に撮ることは、なかなかできない。大株は出会いも少ないので、尚更、難しい。
ユウレイソウの呼び名の通り、ギンリョウソウを初めて見る人にとっては、生えている場所の雰囲気も相まって、その姿にドキッとさせられる植物である。筑波山では、「不気味な植物だから」と言って、抜いて捨てられる場面に出くわしたことがある。タマゴタケを採りに来たというその人が、ギンリョウソウを抜いていた。理由を聞くと、「姿が気持ち悪く、生えていても意味がないから抜いている。」ということだった。そう思うのは自由だが、それを理由に植物を抜いて捨てるのは許されないと、私は思う。
(ギンリョウソウ/ツツジ科 2022年3月.記)