四国、九州、沖縄に自生する落葉低木。
フヨウは南方系の植物のため寒さにはあまり強くない。私は子どもの頃からフヨウに接する機会があった。主に観賞用として親しんできた。40年前に苗を地植えにしてみた際には殆どが枯れてしまった。現在は、枝は枯れるが幹は生きのびて復活する。温暖化の影響だろうか。
フヨウは一日花で、見ごろは午前中である。9時~10時頃が一番みごとだと思う。時間を追うごとに花色が変化し、その様子を楽しむことができる。次から次へと沢山花が咲き、数か月に渡り楽しませてくれる。
以前、教員から「研究用にフヨウの花粉が欲しい」という依頼があり、花の時期の7月から9月に薬草園で毎朝花粉を採り続けた。花粉採集は5年間続いた。指先で雄しべを雌しべと共に生え際から採るのだが、花弁を残しながら採集するのはとても大変だった。他に2種の植物の花粉採集も同時に採集していたので指先の皮膚が荒れることもあったが、今になっては良い思い出である。
フヨウは挿し木で簡単に増やせる。成長が早いので育てるのもラクである。だが、成長が早い分、材が弱く、台風の時期には裂けて弱ってしまうことがよくある。そのため、挿し木を欠かさないようにしている。
フヨウの葉にはハマキムシが付きやすい。初夏に発生し、ときには数日で元気な葉が無くなるほどに大発生する。ハマキムシは葉を丸め、その中に棲みつく習性がある。そのハマキムシをモズやムクドリが食べにやって来る。丸められた葉の中から、ハマキムシを器用に引っ張り出して食べるのだ。地面に落ちてしまったハマキムシをハクセキレイやガマガエルがおこぼれに与るのを見かけたこともある。モズ達が来た後にはハマキムシがきれいに居なくなっていた。
(フヨウ/アオイ科 2022年3月.記)