サネカズラのこと。西日本の山野に多く生える常緑の蔓性植物。・・・なのだが、私が見てきた数本のビナンカズラは紅葉して葉が落ちる。それらの共通点は樹齢12~13年を越えていて、実がなる。秋に葉が真っ赤に紅葉し、後に殆どの葉が落ちるのだ。(*)
関東ではビナンカズラの自生が無いと言われていた。だが、近年では山野で稀に見かけることがある。もともと自生していたのか、誰かが植えたのか、あるいは鳥が種を運んできたのか、理由はわからない。私がよく行く筑波山でも数本見かけるのだ。40年前は、(私が見かけなかっただけなのかもしれないが)生えていなかったと思う。
かつて、とある場所に、太い立派なビナンカズラが1本あった。それが、20年ほど前のある時、急に枯れてしまった。確認してみると、根元から切り取られていた。同じ時期に、ヤマブドウ、アケビ、サルナシ、マタタビ、イワガラミといった山野に生える植物の古木ばかりがそっくり無くなっていた。それも、平均幹直径が20cm位のものばかりだ。それらの成長をずっと楽しみに観てきた私は、すごくがっかりした。その時の気持ちは今でも忘れられない。
パトロールをしていた監視員に出会ったので、どこの何の木が盗られて無くなったかを地図上で詳しく伝えたが「目が行きとどかないのでしょうがない」という返事だった。
珍しい姿の植物や希少価値の高い植物は魅力的だ。だが、それらを持ち出すことは許されない。
ビナンカズラの実は薬用に利用される。また、赤く大きく、特殊な形をしているため観賞用としても人気があり、鉢植えにしたり、公園の棚などで栽培されたりする。赤い実がまるでキイチゴのように美味しそうだったので、そのまま食べてみたら、瑞々しいもののちょっと渋味を感じる、味のない実で美味しくなかった。ジャムなどに加工して食べることができる。
(ビナンカズラ/マツブサ科 2022年3月.記 * 2023年9月.編集)