
ネナシカズラは葉緑素を持たず、葉はほとんど退化した蔓性一年草の寄生植物である。蔓を伸ばし、長いものは6~7mほどにもなる。発芽時には根があるが他の植物に巻き付いて寄生すると根が無くなる。根無しになることが名前の由来とされる。
昨年、私は福島県の2か所でネナシカズラが枯れている場所を見つけたので。今年9月、花の写真を撮ろうと時期を狙って出かけてみた。そろそろ咲く頃ではないかと期待して様子を見に行くと、昨年発見した場所に植物本体があった。かなりの広範囲を覆っている。特大サイズだ。しかし蔓ばかりで花は見当たらなかった。
5月頃、利根川沿いを車で走った時に土手の草がちょっと弱っているようにみえた。気になったので車を降りて状態を確認しに行った。よく見るとネナシカズラの小さな苗が数本伸びていた。これが原因か、と思い経過観察をすることにした。翌月、その後が気になり利根川土手に車を停めて改めて様子を見に向かった。
土手では蔓が植物を覆っていた。まずは特徴をよく見極めることにして観察を始めた。するとネナシカズラの特徴である紫色の斑点が茎のどこにも見つからない。花はどこだ?まだ花期ではないのか?と、よくよく見ると少し離れた所で咲いていた。距離にして2mほど先だ。植物に埋もれた中から顔を上げてみて改めてその姿に震えた。利根川の土手20mくらい、一面が蔓で黄色く覆われていたのだ。とにかくすごい勢力で、私はここまでの規模で繁殖するネナシカズラはそれまでに見たことがなかった。しかし特徴からしてネナシカズラとは考えにくい。ネナシカズラの仲間でマメ科に寄生して枯らしていく“マメダオシ”という植物もあるが、蔓は植物種を選ばず覆っている。考えているうちに頭の中を過った名前があった。“アメリカネナシカズラ”だ。10年ほど前に何かで読んだ微かな記憶だが、確か侵略的外来種の一種であるはずだ。これがアメリカネナシカズラか?ちょっと恐ろしい感じの植物だ。だが、本体からは想像がつかない可愛いらしい小さな白い花を咲かせていた。
アメリカネナシカズラはネナシカズラと同様、発芽した時には根が有る。だが、すぐに近くの植物に巻き付き、根無しになる。吸盤状の寄生根で絡みついた植物の養分を吸い取り、どんどん伸びて次々と近くの植物に寄生しては枯らしながら広がるように成長していく。まるで植物を覆いながら食べつくしていく動物みたいな植物である。
実際にどのくらい蔓先が伸びるか、私は暫くその場で観察をしていた。じっと見ているとユラユラと揺れながら蔓先が伸びているのがわかるほどだ。次に絡む先を探しているのだろう。たった3時間で蔓先は4cmも伸びていた。すごい速さである。気温、湿度、日照など条件はあるのだろうが成長の速さに驚かされた。近くの植物たちが覆い尽くされるのもわかる気がした。私はこの時まで、これほどの規模で繁殖するネナシカズラの仲間を見たことがなかった。
以前どこかで見かけたマメダオシは畑の枝豆だけに寄生していたが、その他の植物には殆ど絡んでいなかった。ネナシカズラはぱっと見、もっと白っぽい。ということは、これがアメリカネナシカズラであろうと私は半ば確信した。写真を200枚ほど撮った所で雨が降ってきたので退散した。私は薬草園に戻り、すぐにアメリカネナシカズラを検索した。どうやら間違いは無さそうである。また一つ新しい植物と出会えた。サンキュ。
余談だが、この植物を食べていたハムシがいたので、こんどはそれがどんなムシなのか気になっている。この時は雨で止むなく退散したが、時間をみつけてよく観察したいと思っている。
(アメリカネナシカズラ/ヒルガオ科 2024年7月.記)