
ハシブトガラスのペアを紹介する。彼らとの付き合いはそこそこ長く、12年くらいになる。彼らに初めて会ったのは手賀川の手賀沼寄りだ。留鳥になっているコブハクチョウのガーコ(命名:私)たちに会いに行くと必ず私の所にやって来るようになり、やがて「ガーガー」と挨拶をしてくれるようになった。私がコブハクチョウに向かって「ガーコ」と呼びかけていると興味を持ったらしく、私の背後の水門の上に止まり、いつの間にか「ガーガーガーコ」と私の真似をするようになった。
それからというもの、彼は会えば私に何かを話しかけてきた。はっきりとは聞き取れないものの何か言っている。声をかけてもらいたいのだろうと思い、彼のことも「ガーコ」と呼ぶことにして「ガーコ、おはよう」と、私も会うたびに声かけをした。
ある日、私が別のコブハクチョウのペアの所へ向かっていると、ハシブトガラスのガーコが私の車の後を追ってきた。車を降りるとガーコは水門の上にとまり「アーワーアーワー…ウーン…」と何かを話し始めた。私がコブハクチョウのラッキー(命名:私)にむかって「ラッキーおはよう。今日はカラスのガーコが着いてきたよ」と話しかけていると、ガーコは後ろの水門にとまり「オアヨウ…オアヨウ…」と聞き取れるくらいにしゃべり始めた。私は「これはチャンス!」と思い、ビデオカメラを回し「ガーコおはよう、おはようガーコ」と声をかけた。すると「オアヨウ…オアヨウ…オアヨヨヨヨン」と発声し始めたのだ。その後も私の姿を見ると「オアヨウ」と声をかけてきてくれた。私がコブハクチョウたちに会いに行くと、ハシブトガラスのガーコはいつの間にか背後に来ている。私が「おはよう。おはよう、ガーコ」、「ハイおはよう、ガーコ来たの?」と聞けば「オアヨウ…オアヨウ…」と言う。
ガーコはビデオカメラを向けるとなぜかしゃべらなくなり、止めるとしゃべりだす。明らかに私をからかっているのだ!さすがハシブトガラス!!「ガーコ、頭良いね」と褒めれば、手すりの上でピョンピョン跳ね、喜ぶ仕草を見せる。言葉を理解したというよりは、私の声音で褒めたことが伝わったという感じだろうか。
手賀沼で2、3日会えないと、ガーコは私の自宅まで飛んで来るようになった。車を追跡して家を覚えたのだろう。私の姿を見つけて「オアヨウ」と挨拶をしてくれるので、声を頼りにあたりを探すと玄関横の電柱から見下ろしていたりする。「おはよう、ガーコ。来たの?今から(手賀沼に)行くよ」などと話していると、ガーコの連れ合いがやって来て手賀沼方面に飛んでいった。
ある日、近所のおじさんにハシブトガラスのガーコと会話をしているところを目撃された。何を言われるのかと少し身構えたが、おじさんは「あのカラス、喋るんだ!?カラスがおしゃべりをすると話には聞いていたが、見たのは初めてだよ!」と興味津々と言った様子で色々と尋ねてくれた。少し説明をして「良かったら動画ありますよ」というと、是非見せてほしいと言ってくれたので、私はいくつかの動画をUSBメモリに入れておじさんに渡した。おじさんは数週間後にやって来て「カラスの動画を見たよ!凄いね!」、「これから私もカラスよく見よう!」と感動しながら話してくれた。知り合いになったカラスが何羽もいるので、おじさんにまた紹介しようと思う。カラスたちは本当に頭が良いと実感している。
カラスを見かけたら、是非観察してみてほしい。
私は鳥も大好きだ。付き合いの長い個体もいて、彼らからは様々な贈り物をもらった。特にカラスからの贈り物は多く、内容はとにかく多様だ。中でもキラキラしているものが多い。例えばキーホルダーやガラス瓶のかけら、アクセサリーをつけた小さなぬいぐるみなど。他に、旧八千代薬草園では泥めんこや古銭、小鳥の死骸やマヨネーズ容器など、とにかく多種多様なものをもらった。特に驚いたのは、キャンパス内の薬草園で作業をしているときに届けられたものたちで、学生の物と思われる定期券や携帯電話、鍵、アクセサリーなどだ。キャンパス内でもらった貴重品の類は学内の落とし物の担当部署へ届けるのだが、毎回説明に苦慮したものである。
カラスたちはそういったものを嘴に咥えて持って来て、私の前に置いてくれる。時には愛車のパジェロのボンネットに置いていったりする。そんな時に「ありがとうね!」と言うと、彼らはピョンピョンと跳ねる。その行動は喜びを表現しているように私は思う。そして、また次の贈り物を持って来てくれるのだ。カラスたちはすごく素直な表現と素直な行動で思いを伝えてくれていると感じている。また、彼らとはいつの間にか不思議な信頼関係が成り立っているようにも感じている。私は彼らからの贈り物の一部を記念として今でも大切に持っている。
(ハシブトガラス/カラス科 2022年10月.記)