
私は25年ほど前からハクチョウたちに会いに行き、声を掛け続けている。個体を区別するために名前を付け「おはよう」、「いい天気だね」などと一方的に話しかけていた。少しずつ警戒を解いてくれた彼らから、私は色々な体験をさせてもらった。そのうちのいくつかを紹介したいと思う。
出勤前にハクチョウたちに会いに行ったあと、薬草園に到着して自宅の鍵を無くしたことに気づいた。夕方遅く、困ったなと思いながら仕事の後に会いに行くと、私が落とした鍵を拾ってくれたらしく、ハクチョウが鍵をくわえて待っていてくれたことがあった。
ある時は、誰かの忘れ物だろうか、長い釣竿を背中に乗せ、2羽で器用にバランスを取りながら運んできて見せてくれた。その時の様子は記録できなかったが、ハクチョウが背中に竹を乗せて運んできた短い動画があるので紹介したいと思う。
ハクチョウたちは怪我をしている仲間や他の鳥たちの釣り糸トラブルを知らせに来たり、罠にかかったヒナの助けを求めてやって来たりした。巣を作ると「巣を作った」と教えてくれ、ヒナが孵れば「孵ったよ」と教えてくれた。例を挙げればきりがない。
私は以前、鏡を彼らの前に置いてみたことがある。すると個体差はあったが鏡に映った姿を自分であると理解していたように見えた。おそらく常に水に映る自分の姿を見ているので学習していたのだろうと私は思っている。
彼らとのコミュニケーションはとても面白い。私が彼らに何かを頼むと焦らすことがある。運んできた竹を「ちょうだい」と言ってもなかなかくれなかったりするのだ。「わかった」というサインも出してくれる。会話の最後には必ず尾羽を左右に振り「ウル、ウル」と返事をしてくれるのだ。私は「ヘンヘン」と返す。
彼らの声に耳を傾け、迷わず手助けをする私に「訴えかければ何とかしてもらえる」とわかっての行動だと思う。全ての行動が、彼らがとても高い知能を持つ生き物であることを示している。そのことを私に教えてくれたことに心から感謝する。
(ハクチョウ/カモ科 2026年2月.記)