

虹色に輝くとても綺麗な甲虫。体調3~4cmほどの細長い姿をしている。ヤマトタマムシともいう。
小学生の頃の私はタマムシが何を食べ、どこにやって来るのかも全く知らなかった。ただ夏の終わりにキラキラな死骸を拾っただけで上機嫌になった。実は今でもその時の翅を大事に持っている。
私は写真を撮るようになってから色々な生き物に興味を持つようになった。観察を兼ね記録写真を撮り始めたのだ。カメラを持ち歩くようになって暫く経ったある日、利根川河川敷のそばにある樹高8mほどの大きなエノキでタマムシ8匹が一か所に集まっている場面に出会った。こんなに多くが集まっているのを見たのは初めてのことで、私は写真を撮るのも忘れ夕方まで見入ってしまった。そんな場面にまたすぐに会えると気楽に考えていたのだが、翌日同じ場所に行っても1匹も見つからなかった。写真を撮らなかったことを後悔した。その後は、集まりそうな場所の見当をつけて探すようにしていたので、2~3匹のタマムシ集団になら会うことができた。だが8匹以上ものタマムシが集まる様子を見られたのはそれから30年も後になってからだった。
その日、私はエノキの木の枝に12匹のタマムシの集団を見つけた。久しぶりのことにとても興奮したのを覚えている。その上、集団の中にはやたらと赤く輝く個体がいたのだ。他にも数匹、赤味を帯びた個体がいたのだが、どうしてもその赤く輝く個体を撮りたかった。かなり粘ってシャッターチャンスを狙ったが残念ながら撮れなかった。彼は飛んで別の枝に止まり、私に気づくとすぐに隠れてしまう。その繰り返しだった。どうにか他の赤味を帯びた個体は撮ることができた。それを昆虫に詳しい知人のTさんに見てもらったところ、そこまで赤い個体は珍しいということだった。あのひと際真っ赤に輝く個体を撮れなかったことが残念でならない。いつか会えるだろうか。
(タマムシ/タマムシ科 2022年2月.記)