カブトムシは甲虫の中で一番知られ可愛がられてきた昆虫と言っても過言ではないだろう。私も小学生の頃は時期になると自宅の隣にあるビルの街灯に集まるカブトムシを捕りに行った。他にもクワガタムシやカミキリムシなど沢山の昆虫を集めた。友達にあげたりもした。ある年、捕ったカブトムシの中に一年に一度会えるかどうかというくらいに大きな赤いカブトムシがいた。15cmくらいはあったと思う。普通のカブトムシより二回りほど大きく立派な個体だった。嬉しくてずっと眺めていた。その後は残念ながらそこまで大きなカブトムシには会えていない。
私は今でも時期になるとカブトムシの生息地を訪れ写真や映像を撮っているのだが、その生息地や個体数が年々減っているのを実感している。カブトムシを見に行くと必ず、私はオオスズメバチか黄色スズメバチに出会う。カブトムシとスズメバチの餌場が重なっているからだろうと思う。私が経験した限りでは、スズメバチは単独でいるときには触っても刺すことはなかった。食事中のスズメバチを指の腹でそっと触ると彼はその間、私の顔をじっと見ていたようだった。だが、危険なことは確かなので絶対に真似をしないでほしい。
私がここ数年で見に行ったカブトムシの生息地のひとつに柏市の畑のそばの防風林がある。畑と畑の境にある細長い防風林で、その中にクヌギの樹が10本ほどあった。その場所の特徴は、私が見た数ヶ所の中でカブトムシの個体数が一番多く、また、カブトムシの姿を見られるようになってからあまり年数が経っていない‘新しい生息地’だ。そこに行けば必ずカブトムシが5~6匹いて、多い時には15匹以上、毎年のように会うことが出来た。私はそこで彼らの生態を観察し、写真で記録を撮っていた。観察をはじめて6年が経った頃、その場所の環境が変わり、カブトムシの姿を全く見なくなってしまった。クヌギの樹が切られてしまったのだ。切ったのは畑の持ち主で、話を聞くとカブトムシを取りに来た人に畑を悪戯されたため、泣く泣く切り倒したとのこと。困ったことである。
3年前に知り合いの造園屋さんからカブトムシの幼虫を200匹ほどもらった。チップ置き場に積み上げていたチップを剥がしたところ、カブトムシの幼虫が沢山みつかったということだった。私はもらった幼虫を薬草園と薬木園に放してみた。羽化してもどこかへ飛び立ってしまうと思うが、数匹でもキャンパスに居ついてくれれば良いと思っている。