私が子供の頃はめったに会う事ができなかったチョウの一種。なぜなら、私の家の近所では、ジャコウアゲハの食草であるウマノスズクサがほとんど無かったからだ。その頃に私がウマノスズクサを見たのは、利根川の土手の一部と、山のふちの明るい場所2か所だけだった。
私がチョウに興味を持ち始めた小学3年生の時のこと。我が家にジャコウアゲハを呼びたくて、ウマノスズクサをあちこち探し回った。見つけたウマノスズクサを堀って、持ち帰って庭に植えてみたのだが、何度やってもすべて枯れてしまった。今思えば、その頃は好奇心が勝って植物を持ち帰ってしまっていたと思う。
現在、薬草園ではウマノスズクサ、オオバウマノスズクサ、アリマウマノスズクサ、ビロードウマノスズクサを栽培している。これらはジャコウアゲハの食草となる植物である。なので、キャンパスではふつうにジャコウアゲハを見ることができるようになった。薬草園を見学に来られる方の中には、チョウ好きの方もいて、ジャコウアゲハが飛んでいると、その数に驚き、嬉しそうにされる。
チョウにとって鳥は天敵である。幼虫は天敵の鳥に食べられないように、ウマノスズクサに含まれる毒成分を体内に貯め込んで身を守っている。体の真っ赤な模様は「自分には毒がある」と、天敵に警告しているようである。ジャコウアゲハの幼虫をじっくりと観察をしてみると、生存競争が激しいことがわかる。食べ物が無くなると共食いをする。小さな個体が先に餌になる。
成虫は、とてもゆっくりと優雅に飛ぶ。鳥たちはジャコウアゲハの体内に毒があることを知っているので、たとえ捕まえやすくても、見て見ぬふりをする。なので、ジャコウアゲハの姿を真似た体色の生き物が存在する。ガの仲間のアゲハモドキである。アゲハモドキの成虫の形態はジャコウアゲハの成虫にとても似ている。
(ジャコウアゲハ/アゲハチョウ科 2022年6月.記)