「ハチドリみたいな生き物がいるので教えてほしい」と、たまに問い合わせがある。今はスマホや携帯で動画や写真を簡単に撮れる時代。メールで送られてきたものを確認するとほとんどがホシホウジャクだ。たまにオオスカシバのこともある。ホバリングをして吸密しているホシホウジャクの姿は、確かにハチドリに見えるかもしれない。
ホシホウジャクにはホシヒメホウジャクやヒメクロホウジャクなど、何種類か仲間がいる。ホバリングをしながら、とても長い口吻を伸ばして吸密する独特な形態が、個人的には好きな昆虫だ。
ホシホウジャクの幼虫はヘクソカズラやクチナシを食べる。食べ方が半端でなく、すぐに葉が無くなってしまう。園芸をしている知り合いから「ホシホウジャクの幼虫が居る」と連絡が来ると、私は幼虫が駆除される前に救出に出向く。連れ帰った幼虫は成虫まで育てる。ホシホウジャクは夜行性なので、飛び立てるまで成長した彼らを夕方に放す。誰かにとっては害虫かもしれないが、駆除を続ければ絶滅につながる。私は生き物を殺したくはない。
ホシホウジャクは夜行性のスズメガの仲間なので、夏の夕方になると花蜜を吸い活動を始める。以前、私はホシホウジャクの胸部の背中側に食紅で色を付け、観察を続けたことがある。その時、ホシホウジャクはいつも決まった時間とコースを通るという行動を見せてくれた。吸蜜する花の順番がほぼ決まっていたのだ。観察は20日ほど続いたが、その後は姿を見せてくれなくなった。私は彼らの寿命を知らないのだが、寿命で死んでしまったのか、何かが有って来られなくなったのかはわからない。
(ホシホウジャク/スズメガ科 2022年2月.記)