低山帯の山道でよく見かける甲虫。山によく行く人には馴染みの昆虫だと思う。縄張りに入ると「何か来たぞ。」と、見に来る。色鮮やかでフレンドリーな虫で、私の好きな虫の一種。
ハンミョウはオスとメスで大きさが違い、個体により模様が微妙に違う。私の気のせいかもしれないが、よく会う個体がいて、彼らも私をわかっているように思えてならない。なぜかと言うと、私の目には、寄って来てくれる個体が、いつも同じ個体に見えるからである。
山道を歩いていると、ハンミョウは先へ先へと私たちを意識しながら先導をしてくれているように感じる。山の神社の参道などで先導されると、山全体に歓迎されているような気持ちになる。
ある時、山道で座って休んでいると、ハンミョウが手の届くところまで飛んで来て、私を見あげた。ハンミョウは首を傾げ、まるで「歩き出そう」と、私に言っているようだ。山の中腹を過ぎ、植物の写真を撮っていると、そのハンミョウは、いつの間にか姿を消していた。帰りに同じ道を通るので気にかけながら歩いていたら、現れた!先にも述べたが、ハンミョウは個体差がかなりある昆虫だ。なので、先刻の個体かどうか、撮ってあった写真と照らし合わせてみる。同じ個体だ!そこからは、車まで一緒に行き、別れた。
山道で出会ったそのハンミョウが気になり、4週間ほど続けて週末に通った。3週間は無事に会えたが、4週間目には、探したが会えなかった。別の生き物に食べられてしまったのか、誰かに捕まったのか、それとも寿命か・・・。当時、生物学科に在籍していた昆虫に詳しいI君にハンミョウの寿命を聞いてみたのだが、まだはっきり解らないとのことだった。
(ハンミョウ/オサムシ科ハンミョウ亜科 2022年3月.記)