

チョウトンボは6月~7月頃に多く発生するトンボ。沼やため池などのあまり流れの無い場所でヤゴが育つ。その周辺に群れていることもある。見る角度により変化する金属色に光る翅を持つ。本当に綺麗なトンボだ。他のトンボに比べて翅の幅が広いが翅のわりに体が小さく、ちょっとアンバランスだ。とてもトンボとは思えないような、まるでチョウのようなひらひらとした飛び方をする。ふだんは単独か数匹で空高く舞っていることが多い。朝のうちは葉の上や棒の先端で休んでいる姿を見かける。
私が彼らによく会う場所は佐倉市や印旛沼周辺だ。沼やため池の周辺、田んぼのふちの林の駆け上がりなど、いくつかある。南風が少し吹くと、風に乗ってチョウトンボが溜まる場所がある。20年ほど前は、多い時で500匹を超えることもあった。身近なトンボの一種だったが今ではあまり見られなくなり、絶滅危惧種になってしまった。
私がよく行く沼で出会うチョウトンボには、自分のお気に入りの居場所があるらしく、よく場所取り争いをしているのを見かける。空に近い枝先や、開けた場所に伸びた葉先などだ。若く体の大きな力の強い個体がより良い場所を占めているように私には見える。
彼らは、メスが来るたびに枝先から飛び立ってアピールをするのだが、ペアリングに失敗するとまた戻ってくる。うまくペアリングが出来ると、そこにいた個体はどこかへ飛んで行き、次の強い個体がその場所に陣取る。目の前に獲物が来たときにも素早く狩りをして戻る。それほどのお気に入りになる居場所とは、おそらく、自分が良く目立ってペアリングの相手探しに都合が良く、視野が開けていて狩りをするのにも都合が良いのだろうと思われる。だがリスクも大きいらしく、私は彼らがツバメに狩られた瞬間を何度か目にしている。チョウトンボにとっての“良い場所”の条件は、相手探しが最優先なのだろうが、命がけでもあるように思う。自分のDNAを残すためには危険も厭わないのだろう。
私はチョウトンボの群れに会った時には、時間の許す限りずっと観察をしてしまう。そうしていると、よくイタチ君やアナグマ君たちが来てくれる。じっとしている私を物珍しそうに見て行くのだ。観察をするのはいつも夕方になってしまうのだが、運が良ければホタルに出会えるのでそれも悪くない。時間はいくらあっても足りない。
(チョウトンボ/トンボ科 2022年12月,2024年6月.記)