
ビロードツリアブはビロードのような長毛に覆われた体に長い口吻を持つアブ。私は毎年3月に入ると筑波山に彼らに会いに行く。朝早くは気温が低くビロードツリアブは居ても殆ど動かない。陽当たりの良い山道の陽だまりで待っていると日向ぼっこに来てくれる。手持ちの温度計で13℃を超える日は無風の陽だまりだと更に3℃ほど上がる。座ってじっくり観察をしていると私の周りでホバリングが始まる。動画を撮り写真を撮り、しばらく観察をしながらじっとしていると体に数匹止まる。彼らに会うと春が来たと実感する。
更に気温が上がると咲き始めたばかりのキブシの花に蜜を吸いに行くようになる。ホバリングをしている姿はハチドリを思わせる。手に止まった個体をよく見ると全身毛だらけの達磨の様なとても愛くるしいアブ。メスはオスより一回り体が大きく、顔の周りでホバリングをしていると結構大きな羽音が聞こえる。ちょっとした動作に反応しすぐに逃げる。手の甲に止まった個体を目の前にそっと持ってくると、私の目の動きを見ているのか首を傾げ目が合ったように思える。見れば見るほど可愛らしい。でも彼らに会えるのはほんの2カ月ぐらいで、春先に出てきて夏前には姿を消してしまう。
気持ちの余裕が出来てきて彼らとの触れ合いが増えたように思える。
(ビロードツリアブ/ツリアブ科 2022年10月.記)