トモエガモは寒くなると越冬するために日本に飛来する渡り鳥。主な繁殖地はシベリア東部。
15年くらい前まで、千葉県の手賀沼で見られたトモエガモは4羽、成田市の坂田ヶ池では2羽など、千葉県北西部にやってくるのはほんの数羽だったと思う。当時、鳥好きの知人から聞いていた話では多い時でもその二か所の合計で30羽ほどだったそうだ。トモエガモは主に西日本の日本海側で、群れで越冬していたと聞いていた。だが、ここ数年は数千~数万羽のトモエガモの群れが千葉県の印旛沼で確認できるようになった。これも温暖化の影響なのだろうか。
私は今年の正月休みに印旛沼に行ったのだが、そこでトモエガモの大群に会った。ひとつの集団に3,000羽くらいいたのは数えた。沖にまだ四つか五つ、同じくらいの数の塊があったので少なく見ても12,000羽はいたであろう。彼らは夜行性なので昼間にはかたまって沖の方で羽を休めている。
印旛沼では強風が吹くと沖に波が立つ。なので、トモエガモたちは風上の岸寄りに集まってくる。この時が彼らに近くで会える絶好のチャンスだ。トモエガモは警戒心が強く、臆病な鳥のように感じた。全長は35~40cm。コガモぐらいの大きさで、顔には独特な巴模様がある。よく見ると一羽一羽、顔まわりの白い模様が微妙に違う。形や幅、色などだ。その部分が薄い茶色や灰色がかっている個体がいて、最初は汚れているのかと思ったが、どうやらそうではなく地の色らしい。
大群の中でたくさんのペアができていて、それぞれ2羽で仲良く並び泳いでいた。向かい合い小さくお辞儀をするしぐさが見られるが、これが彼らの求愛行動なのだろうか。「ククククコココ」などと小さく声を出すのだが、大勢になると騒いでいるように聞こえる。その中にペアに割り込むオスがいた。彼は追い払われると別のペアにちょっかいを出していた。そんなことを40分ほど繰り返していたのだが、そこへ4羽のオスがやって来た。仲間なのだろうか、互いに首を上下し、5羽で揃って沖へ飛んで行った。「向こうで探せよ」とでも言われていたのだろうか。ものすごい数のトモエガモがいたので、観察をしているととても面白かった。見ていて飽きない鳥だ。
夕方になると彼らは陸地のどこかへエサ取りの為に飛び立った。
(トモエガモ/カモ科 2022年3月.記)