カワラヒワは全体的に褐色で羽に黄色い帯状の模様がある。飛ぶとその黄色が目立ち、逆光になると輝いて見える。とても綺麗な鳥だ。スズメより一回り小さいが、体が丸く見えるためスズメよりも大きく感じる。彼らは数種類の囀りといくつかの言葉を持ち、群れの中でコミュニケーションをとっているように、私には聞こえる。私には、カワラヒワはシジュウカラに次いで多くの言葉を持つ鳥のように思える。
私は彼らが発する言葉を、聞こえた通りにオウム返しのように真似て返事をすることにしている。手賀川沿いでカワラヒワ数十羽が電線に止まっているのをよく見かけるのだが、下を通る私と目が合うと声をかけてくるものがたまにいる。そういう時にはこちらから必ず返事をする。カワラヒワは基本「ピピ、ピピ。」だが、何回か会って顔見知りになると、鳴き方が変わって必ず「ジージー」と私を見下ろして話しかけてくる。
ある時、何度も会って顔なじみになったカワラヒワが1羽で飛んで来て電線に止まり、黙って私を見下ろしていた。私が気づかないふりをしていると彼は「早く気付け」とばかりに羽音を立てて何度も羽ばたきをするので、今気づいたようなふりをして声をかけると喜んだ様子で電線から私を見おろした。だが、こちらから先に「ジージー」と声をかけた時には、わざと知らん顔をしてそっぽを向くのだ。
カワラヒワなのでヒワと名付けた。私が「ヒワ、やって。」と声をかけ、鳴いてくれるように頼むと、ヒワは得意げに囀り始めてくれる。長い時には3分以上になることもあった。囀りながら時々見下ろし、私の様子を確認しながら囀り続ける。「ありがとうね、ヒワ。はい、どうも。」とお礼を伝えると、私の言葉を理解しているかはわからないが、ヒワは仲間の所に飛んで行った。観察をしていてわかったのだが、私に興味を持ってくれている彼は、群れの中で体が一番大きい個体のようだ。彼は、私にだけではなく誰にでも同じようにアピールしているように私は思う。
2018年の冬に、私は印旛沼でカワラヒワの白化個体3羽に偶然出会った。そのうちの1羽が私に興味を持ってくれて逃げなくなったので写真を撮らせてもらうことができた。その日、同じ場所で出会った白化個体3タイプのうちの1羽だ。3羽とも黒い眼なのでアルビノ種ではなさそう。その時はいちどに3個体に会えたので「結構いるものなのだ」と勝手に思い込んだ。後日知人にその話をすると、白いカワラヒワはとても貴重だと聞かされたのだが後の祭り。もっと記録をとっておけばよかった。その3羽に出会ったあたりによく行く鳥仲間がいるので、注意して探してみるようにお願いしたのだが結局見つからず、その後は私も全く見かけることがなかった。写真数枚だけでも記録として残すことができたので、まあいいか。
(カワラヒワ/スズメ目アトリ科 2023年1月.記)