名前に“イソ”とつけられるほどに、海岸線に多く棲んでいる鳥。“ヒヨドリ”とつくが、ヒヨドリではなくヒタキの仲間だ。
イソヒヨドリのオスの羽毛はとてもきれいな青味がかった灰色で、お腹は赤茶色。メスの羽毛は黒に近い灰色でウロコ模様がある。こちらもとてもきれいだ。もちろん個体差があり、色も大きさも微妙に違う。
私の親父が釣り好きだったので、若い頃には私の運転でよく一緒に海へ行った。親父が魚釣りをする間、私は海岸の植物や生物の観察をしていた。そこでイソヒヨドリたちに会っていた。植物を探して松林の中に入っていくと、きれいな鳴き声が聞こえてくるので、やって来たことがわかるのだ。姿もきれいなのでとても印象に残っている鳥だ。
イソヒヨドリは海沿いでは定番の鳥の一種なのだが、ここ数年、なぜか内陸でもよく見かけるようになってきた。彼らは人工の建物が好きなようで、鉄骨の隙間やコンクリート造の建物の外壁のへこんでいる所、そしてビルの屋上などを営巣地に使っているのをよく見かける。私は千葉県北西部に住んでいるのだが、よく通る土手沿いにある利根川の排水機場や水門で営巣しているのを、ここ10年ほど毎年確認している。キャンパスでも同じく10年ぐらい前から急に彼らの姿を見る機会が多くなってきた。彼らがキャンパスに来てくれるのは、だいたい朝6時ごろだ。ちょっと甲高い、きれいな鳴き声で来たことを教えてくれる。縄張りを主張しているのか、必ず建物の屋上の隅で囀る。私が「オイ、来たのか。」と声をかけると鳴き声が大きくなる。まるで「来たよ!」と返事をしてくれているようだ。
(イソヒヨドリ/ヒタキ科 2022年4月.記)