この個体は八千代薬草園(八千代市大和田新田)が有った時に出会ったハクセキレイ。人慣れをした個体だった。
薬草園で作業をしていると「ピピピ・ピピピ」と飛んで来て、私の目を見て自分の足をツンツンと突く。ハクセキレイだったので「ハク」と声をかけ、より近くに来るように声をかけ続ける。3日ほど繰り返し声をかけると、足元まで来てくれるようになった。目線を少しでも合わせるために私も座り、「ハクどうした」と声をかけると「ピピピ」と尾羽を上げ下げし、返事をしてくれる。よく見ると足に絡んだ糸が食い込んで、ハクの足を変形させている。すごく痛々しい。近くに寄らせて観察を続けたが、糸が少し見えるだけで、もう取ってあげられる状態ではなかった。
ある日、ハクが小ムシを私に見せつけるように持ってきて置いた。「ハク、どうした?」、「何か欲しいの?」と聞いてみる。「ピピピ・ピピピ」と言いながら団子状になった自分の足を突き私に何かを知らせる。この足なので思うように餌が取れないと言っているのだろうか。パンを細かくしてあげてみる。すると、何度も「ピピピ・ピピピ」と鳴き、はしゃぎ始める。もう一度あげると、食べ物が欲しいとわかってくれたと、更にはしゃいでいるようだ。職場の仲間にも声をかけ、皆で食べ物をあげるようになった。すると、毎日来るようになり、かなり私たちに慣れてきた。
またある日の昼休み。ハクと遊んでいると、視界の隅に鳥の影が見えたその瞬間、チョウゲンボウが私の頭上をかすめた。危ない!とっさに左手でチョウゲンボウを払った。すると彼のツメが私の手に食い込んだ。「追い払って、ごめんな。」と謝るとチョウゲンボウは飛び去り、ハクは無事だった。「ハク大丈夫か?」と聞くと、「ピピピ・ピピピ」と鳴きながら私の手に乗る。チョウゲンボウに受けた傷はしばらく痛みがあったが、膿みはしなかったのは幸いだった。こんなことがあってから更に心を許してくれたのか、私の姿を見ると何処からか飛んで来て挨拶をしてくれる。
ある時、車で八千代薬草園に向かっていると、「ピピピ・ピピピ」と鳴きながら、走る車に沿って飛ぶ鳥の姿を見が見えた。「ハクか?」と尋ねると「ピピピ」と返事をしてくれる。「ハク、先に行って待ってて。」-「ピピピ」。私が駐車場に着くと、先回りして待っていてくれた。車のボンネットに乗り、私と目線を合わせて挨拶を交わした。ここまで慣れてくれることが嬉しかった。
(ハクセキレイ/セキレイ科 2021年12月.記)