キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達(冬のすがた)

理学部II号館

理学部II号館の正面西側にはマメ科のフジWisteria barachybotrys Sieb. et Zucc.がからんでします。
一昨年までは小さな藤棚を作っていましたが、昨年は藤棚を壊してフジの枝を近くの樹木に伸ばしてみました。 連接するケヤキと、タイザンボクにはすぐに駈け上り,春には紫と白の花穂を長く垂らしてくれました。 ニガキ科のシンジュAilanthus altissima Swingleには、昨年誘導したところ、みごとに登ってくれました。 ここには紫色のフジと、白い花のフジがあります。今年も見事な花を見せてくれました。来年はもっと見事な花を見せてくれるものと思っています。

シンジュの隣にはトウダイグサ科のアカメガシワMallotus japonicus (L.f.) Mull.Arg.が高いところに枝を伸ばしています。 枝にはとても手がとどきません。その隣に、バラ科のビワEriobotrya japonica (Thunb.) Lindl.を3本植えてあります。 初夏に、橙色のとてもジューシーな果実を満喫したことですが、花は厳冬期に開花します。 常緑樹で長さ15〜20cmの葉は、ごわごわと波打ち、縁には鋸歯がある長楕円形の葉は密に互生し、全体的に綿毛で覆われています。 枝の先端に花補を生じる枝を生じ、枝は淡い黄肌色の産毛で覆われています。花弁は白く、香りは無い。 若干の耐寒性を持つことから毎年花を咲かせ、春には果実を実らせている。

 
イヌビワ

手前には植栽したコブシがあります。その下に、ウコギ科のカクレミノDendropanax trifidus (Thunberg) Makinoがあります。 3本のあった中の1本だけが生き残っています。成長すると高さ3mほどになります。常緑樹で、暗い林のなかでも成長できる木です。 同じウコギ科のカミヤツデや、ヤツデのように巨大な花穂をつけることはないけれでも、共通する特徴を探して見てください。

 

花壇と花壇の間に、ブナ科のイヌブナFagus japonica Maxim.を植えました。岩手県下閉伊郡山田町関口川の上流から採集してきたものです。 もう5年を経過しました。ブナとの形態的な違いは、イヌブナには葉に綿毛があることです。 ブナにもそのような毛があるのですが、短期間中に抜け落ちてしまいますが、イヌブナはよく残っています。 秋には、ブナのように黄葉し、翌春まで葉が落ちることなくついています。枯れた木であると思わないでください。 メディアセンター前のブナと見比べて、違いをよく確認してください。

 
イヌブナ イヌブナ

花が咲いていなくても、葉が落ちてしまっても、植物の名前がわかるとその植物の冬の過ごし方がとても気になります。 ちょっと、質問をしてみます。答えてください。葉は光合成の工場です。葉が落ちると、植物たちは光合成をまったくしないのでしょうか。 また、ガス交換もしないのでしょうか。一緒に、植物たちを見て回った諸君たちはすでに正確な答えを持っていますね。 一年生枝を鋏で切って研究室に持って帰りましょう。その枝をカミソリ刃で切片を作って顕微鏡で観察すると、表皮の下、皮層の間に、周皮が形成され、その下の皮層細胞の中には葉緑体が入っています。 また、表皮が破れ、周皮の細胞がルーズに出ている所を皮目と呼んでガス交換が行われていると考えられています。 このように落葉樹たちも冬の間も光合成を行い、呼吸をしているわけです。植物たちの息遣いが聞こえてくるような気配を感じるようになりたいものですね。

 

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